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CONTENTS

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イラク避難民人道支援
 (ヨルダン)


●出張報告書
 ・第1回
  2007.11.12 - 11.28

 ・第2回
  2007.12.06 - 12.07

 ・第3回
  2008.01.19 - 01.31


● 初動調査報告
 ・調査地地図
 ・初動調査報告書
  (JPF事務局)

 ・初動調査報告書
  (KnK,NICCO,SCJ)



イラク避難民人道支援(ヨルダン)

ヨルダンイラク避難民支援初動調査事業 調査報告書
平成19年8月27日
 (特活)国境なき子どもたち(KnK)
(社)日本国際民間協力会(NICCO)
(社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)
【概要】

  今回のイラク周辺国初動調査事業では、下記の目的を達成するため、JPF参加3団体が合同で現地調査を実施した。
  1. イラク国内において2003年以降継続している紛争により、イラク周辺国(特にヨルダン)へ避難し滞在している人々(以下、便宜上「イラク避難民」とする)に対し、緊急人道支援分野でのニーズ調査を実施し、事業形成を行う。
  2. 上述したヨルダンにおけるイラク避難民に対する中長期的な支援計画と枠組みをより明確にする。
   2007年7月20日〜8月7日の調査期間において、主に現地で活動する国連機関や国際・ローカルNGO(イラクのNGOも含む)、現地行政機関、及び在ヨルダン日本大使館やJICA、JBIC等への表敬訪問、協議、情報収集等を通じ、ヨルダン全般においてイラク避難民を取り巻く現地の状況及び支援状況の調査を行った。同時に、各団体が個別に現場レベルでの各関係機関・団体との情報交換・協議、また現場におけるコミュニティや避難民へ聞き取り調査等を行った。これら一連の調査から、主に下記の結果を得た。
    ヨルダンにおけるイラク避難民が直面している人道危機とそれに対する支援の現況
    実際に必要とされる支援ニーズと支援可能な項目
    イラク避難民のベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)の充実に向けた中長期的支援の枠組みと具体的計画
※1 ヨルダン政府が国内に滞在するイラク人について「難民」として認定せず、一時的滞在者として扱う傾向が今回の調査で確認されている。この影響により、英語表現についても"displaced Iraqi population" または"Iraqi population in Jordan" などの表現が使われている。本文では外務省文献などで使用されている”Internally Displaced Person(国内避難民)”を参考に「イラク避難民」とした。
   
【調査報告】
1. 調査行程

次の日程で初動調査を行った。

2007年 SCJ NICCO KnK
7月20日(金)  
折居、笠田:関空発
 
7月21日(土)
高松、田沢:羽田発
午後
折居、笠田:アンマン着
(大塚:アンマン駐在)
 
7月22日(日) 午前
高松、田沢:アンマン着
午前〜午後
マルカ地区のイラク人家庭 (5件)訪問
 
午後
SC世界連盟訪問
午後
Tkiyet Um Ali(LNGO)
訪問
・Merci Corps(INGO)訪問
夕方
在ヨルダン日本大使館訪問(2団体)
(イラク・周辺国及びヨルダン政府の動向把握)
7月23日(月) 午前
ICRC訪問(2団体)
 
午後
SCイラク人支援事業地・
東アンマン貧困地区視察
午前
社会開発省訪問
午後
ジャバル・アンマンのイラク人家庭(JPF桑名氏同行)
夕方
JPF合同調査メンバー会合
(オブサーバー参加:JEN、PWJ)
7月24日(火) 午前
・在ヨルダン日本大使館訪問(ヨルダン政府会合事前準備)
 (2団体、JPF)
・ヨルダン政府との合同会議(政府・各省方針聞き取り)
 (2団体、JPF、中島一等書記官)
 (オブサーバー参加:JEN、PWJ、JICA)

レギュイエ、森田:羽田発
午後
・UNHCR訪問
・SC世界連盟訪問
午後
ジャバル・ホセインのイラク 人家庭
(ZENID(LNGO)同行)
・アンマン日本人会
(JPF桑名氏同行)
・ZENID
・UNHCR
ジャバル・アフダックのイラク人家庭(3件)
午後
ハシミテ慈善団体訪問
7月25日(水) 午前〜午後
・東アンマン地区活動視察
・UNICEF訪問
・JBIC訪問
・SC世界連盟訪問
・CIDA・カナダ大使館訪問
午前〜午後
・Italian Hospital
・JOHUD(LNGO)
・ZENID
・社会開発局
・保健省
・教育省
・Caritas Jordan(INGO)
Society Rosary Sister病院
・イルビットのイラク人家庭
(2件)
午前
レギュイエ、森田:アンマン着
午後
現地ジャーナリストとの面会
JPF(桑名氏)によるブリーフィング
7月26日(木)   午前
NCCI(イラクのNGO)訪問
(JPF桑名氏同行)
午前
・JIAA(イラクのNGO)訪問
・ハシミテ慈善協会訪問
午前
SC世界連盟訪問(2団体、JPF)
(オブサーバー参加:JEN)
午前〜午後
・CARE International訪問
・SC世界連盟訪問
午後
UNICEF訪問(2団体)
(オブサーバー参加:JEN)
午後
折居:アンマン発
午後
Higher Council for Youth
(政府機関)訪問
午後
JICAヨルダン事務所訪問(2団体、JPF)
夕方
JPF合同調査メンバー会合
7月27日(金) 午前〜午後
拠点ホテル(情報整理、東京との調整等)
午後
アンマン市内イラク人居住地域 とパレスチナ難民キャンプ視察
夕方
折居:関空着
午前
JIAA訪問
午後
東アンマン地区視察
7月28日(土) 午前〜午後
拠点ホテル(緊急支援事業形成開始・確認事項の洗い出し等)
午前〜午後
Family Guidance and Awareness Center訪問
午前
RAII(イラクのNGO)訪問
午後
アズラックの学校及びユースセンター視察
・サファウィ視察
7月29日(日) 午前
IOM訪問(2団体)
  午前
IOM訪問(2団体)
午後
SC世界連盟訪問
午後
・Women’s Union
・ザルカのイラク人家庭
(3件)
午前
Higher Council for Youth訪問
午後
RAII訪問
7月30日(月) 午前
在ヨルダン日本大使館訪問(3団体)
(調査報告、支援会合結果の聞き取り、協力要請等)
(オブサーバー参加:JEN)
午後
教育クラスターコーディネーション会合(2団体)
(UNICEF、UNHCR他)
午後
RAII訪問
午前〜午後
・USAID訪問
・SC世界連盟訪問
午後
ザルカのイラク人家庭
(6件)
7月31日(火) 午前
UNHCR事務所訪問(2団体)
午前〜午後
拠点ホテル(情報整理、東京との調整等)
午後
SC世界連盟訪問
午後
笠田:アンマン発
8月1日(水) 午前
高松、田沢:アンマン発
午前〜午後(大塚)
教育クラスターコーディネーション会議
・Mercy Corps
・JOHUD
午後
笠田:関空着
午前
RAII訪問
午後
イルビッドのユースセンター訪問(RAII同行)
8月2日(木)
高松、田沢:羽田着
  午前
Higher Council for Youth訪問
午後
フヘイスのユースセンター訪問
アズラックのユースセンター訪問(イラク人の子どもへの聞き取り調査)
8月3日(金)     午前〜午後
拠点ホテル(緊急支援事業形成開始・確認事項の洗い出し等)
8月4日(土)     午前
RAIIとの面会
午後
Higher Council for Youthとの面会
・マダバ視察
8月5日(日)     午後
フヘイスのユースセンター
訪問
8月6日(月)     午前
・IOM訪問
在ヨルダン日本大使館訪問 (調査報告、協力要請等)
夕方
レギュイエ、森田:アンマン発
8月7日(火)    
レギュイエ、森田:羽田着
  全行程:13日間 全行程:13日間 全行程:15日間

2. 調査結果

今回の調査は以下の構成で実施された。

  1. NICCO:2007年7月20日〜8月1日
  2. SCJ:2007年7月22日〜8月2日
  3. KnK:2007年7月25日〜8月7日
  4. 対象地域・組織:アンマン市内(主に東アンマン地域)、アンマン近郊(ザルカ、マルカ)、イルビットなどイラク避難民が存在すると想定される地域を中心に国際機関、日本大使館、JICA、国際NGO,ローカルNGO,ヨルダン政府中央・地方機関、およびイラク人ボランティアを通じたイラク人グループ・コミュニティを対象に調査が行われた。
2-1. 全体調査報告

 ヨルダンはイラク、シリア、イスラエル、パレスチナ、サウジアラビアを周辺国に持ち、不安定な中東情勢の影響を常に受けている。ヨルダンにおけるパレスチナ問題は半世紀近くに渡り経済・政治面に根深い課題を残している。また2006年7月イスラエルのレバノン空爆により発生したレバノン難民は、ヨルダンにも6−7万人が流入した。一方、2003年のフセイン政権崩壊により発生したイラク避難民は継続して流入し、現在ヨルダン国内におけるイラク避難民は約75万人と言われている※2
 避難民は言葉や生活習慣が近いグループ、知り合いや親戚を頼って移動をしているため、他地域事例のようにキャンプで生活し、集団のデータが集めやすい状況とは異なる。避難民にとっても自国における暴力・嫌がらせ・誘拐などから逃げ、ヨルダンにおいては滞在許可がないため警察や移民局に見つからないようにしている状況がある。このため国際機関をはじめとした援助機関においても、インタビューや調査をすることが容易ではなく、避難民の実態数を把握することが困難となっている。
 イラク避難民については当初より国際機関やNGOによりイラク国内外の状況の悪化と支援要請が訴えられてきたが※3、それを集約する形で2007年7月26日(初動調査期間中)、イラク避難民の受け入れ関係国および国際機関による国際会議※4がアンマンで開催された。避難民の受入国となっているエジプト、シリア、レバノン、ヨルダンが避難民の流入により公共サービスや治安維持、水などのインフラ部分に負担が増加し財政に大きな影響が出ている状況を訴えた。対してイラク政府は受入国に向けイラク国民を支援する義務があると訴え、さらに国際社会には各分野における支援の要請がなされた。これを受けヨルダン政府は以下3点を発表した。

1. ヨルダンにおけるイラク避難民の概況:今年6月国王により同様の表明がなされていたが、この会議後に一般に発表する形とした※5
2. イラク人の法的ステータス:ヨルダン政府は、イラク避難民はあくまでも「一時的なゲストtemporary guests」であり、滞在許可や労働ビザは支給しない方針について再度確認した。

3. ヨルダンへの支援:国際的な外部からの支援はイラク避難民だけでなくヨルダン人にも利益が享受されるよう、さらに支援内容はヨルダン政府の計画と指示に基づいて行うよう要請がなされた※6

 これによりイラク避難民を対象とした支援は、ヨルダン政府を通じヨルダン人とイラク避難民の両者を対象に、そしてヨルダンの政府体制・システムの強化を目的とした内容が求められることになった。今後政府内には各省庁に国際援助を受け入れるための窓口などが設定され、さらには分野を共通とするドナー間での調整が行われるため、JFPにおいてもこれらの受け入れ体制の動向に合わせ、援助協調メンバーの一員として動く必要があるだろう。

※2 Immediate Needs for Iraqi Children in Iraq and Neighbouring Countries, UNICEF, May 2007
※3 International Conference on Humanitarian Needs of Refugees and Internally Displaced Persons inside Iraq and in Neighbouring Countries, 17-18 April 2007, Genevaにおいてイラク避難民の状況について国際的なアピールが行われ関係国と援助機関が動き始めた。
※4 International conference on countries hosting Iraqi refugees, 26 July 2007, Amman
※5 これを受け教育分野では8月19日から始まる新学期年度のみで約5万人のイラク避難民子どもの受け入れが開始され、公立の病院でイラク人は35%自己負担(ヨルダン人は20%)で治療が受けられることが発表された (7月30日日本大使館ブリーフィングにて) 。
※6 初動ミッションによるヨルダン政府合同会議(7月24日外務省、教育省、計画省、社会開発省、内務省、保健省)においても同様の要請がなされた。

以下は共同で行われた情報収集作業を通じ、支援内容設定のために確認された主なポイントである。(訪問先・議事詳細は添付「議事・訪問記録」を参照。)

(1)イラク避難民の状況

イラク避難民に関する大規模な実態調査が行われたが、結果が明らかにされていない※7
ヨルダン国内に滞在するイラク避難民は2003年以前にヨルダンに移民した富裕層とのイメージ錯綜があるため※8、援助を必要としているイラク避難民へ支援が渡りにくい。イラク人としても援助組織へコンタクトすることを避ける傾向がある。
ヨルダンにおけるイラク避難民の法的ステータスが保障されていない。
例:イラク人の子どもが学校へ通うことは認められたが、親の滞在に関しては保障されていない。
イラク避難民の就労が認められないため、時間が立つにつれて困窮度が高くなることが予測される。

(2)教育、保健分野への支援内容

ヨルダン政府は喫緊に必要な支援として教育と保健分野へ財政・技術面の支援を要請した。
教育分野では子どもの受け入れ、学校施設補充・建設、教員補充、教材・制服補給、教職員・親・関係者能力育成、心理社会ケア、ノンフォーマル教育、ヨルダン人の子どもとイラク人の子どもの合同受け入れ体制づくり、受け入れコミュニティ支援など※9
保健分野では難民登録なしでも受けられる病院のアクセス確保、受入国の国民と同様の負担率で受けられる医療サービス、それらに伴う増加した財政負担の軽減など※10
インフラ分野として水の供給が足りなくなることが確認されたが、NGOの支援は要請されていない。

(3)ドナー間協調・JPFとりまとめ

上記の支援内容に加え、現在進行中の事業との調整も含み、支援内容はヨルダンの開発目標に合わせた支援を計画する必要が出てきた。
支援地域をイラク避難民の多い地域や、イラク人へのアクセスがあるローカル・パートナーを選ぶなど、対象がイラク避難民を含むように工夫をする必要がある。
ヨルダン政府の受け入れ窓口やこれまでヨルダンへ開発援助を行ってきたドナー、およびイラク避難民を支援するドナー間の調整を行う必要がある。
JPF支援についても参加NGOがそれぞれヨルダン政府と調整を行うのではなく、日本大使館を窓口として、一括して調整を行ってほしいと要請されている。

(4)今後の状況

イラク国内の状況は改善される見通しが立っていない。UNHCRはシリア、レバノン、ヨルダンにおけるイラク避難民の状況は今後さらに悪化すると予測している。
シリアではイラク避難民をまだ受け入れているため、シリアおよび周辺国での状況が悪化した場合、ヨルダンにも影響がある可能性がある。
このため状況は長期化する恐れがあることから、緊急支援から初期の開発フェーズにつなげていく視点を持っておく必要がある。
プログラムを開始し現地入り後、イラク難民の状況把握が可能になると予測される。このため、プログラムの方向性を適宜修正・管理する必要がある。
これまでのヨルダンの中東安定における役割から判断すると、ヨルダンは周辺国を含むイラク避難民支援における継続した窓口となる。「Championing Jordan」のようにヨルダン政府の方針を評価し、NGOとしてもアピールするなど、ヨルダン政府の果たす外交的な役割について継続して支援することは、効果的なイラク人への支援を確保する方法となる。

 今後イラク避難民を対象にヨルダンでNGOが支援活動を行う場合は上記の点を含め、刻々と変わり行く状況についてJPF全体として関係者間の情報交換をしっかり行い、現状認識と他ドナーなどの動きを現場および東京レベルにおいても行っておくことが重要になるだろう。

※7 2007年4月時点でヨルダン政府は6月に結果を公表するとしていたが、現時点においても公表はされていない。実態調査は終了しヨルダン政府による精査段階にあるが、海外援助の取り付けやイラク政府との関係などの政治的な背景から、国際援助機関関係者には政府が意図的に発表を遅らせている可能性を示唆する者もいる。このため正確な統計発表は存在しないが、政府によれば、50万人〜80万人、アンマン、ザルカ、サイファ、イルビットに多くが滞在しているという(7月24日政府合同会議)。
※8 国際援助関係者からのヒアリングによれば、富裕層のイラク人はヨルダンの銀行に15万ドルの預金を持つことで、ヨルダンにおける居住権を獲得しており、ヨルダン人と同様の行政サービスを享受できる。これらの富裕層はイラク人の数パーセントのみであるといわれているが、羽振ぶりのよい生活をしているため、「ヨルダンに居住するイラク人はお金持ち」というイメージが先行している。
※9 Launch of Joint UNICEF-UNHCR Education appeal for Iraqi Children, Jordan, 31 July 2007
※10 “Consultation focuses on health needs of displaced Iraqis”, JORDAN TIMES, 10 August 2007

2-2. 現地調査結果報告(団体別)

国境なき子どもたち(KnK)

【背景】
 調査実施時において、イラク避難民に関する情報は非常に限られていた。避難民の人数や居住地域、生活の様子や置かれている状況、彼らが抱えている問題等について、大規模な調査等はこれまでほとんど行われていなかった。
【調査地域】
 国境なき子どもたち(KnK)では、ヨルダン社会開発省に登録されているイラクのNGO、Royal Association for Iraq Immigrants(RAII)等との協力の下、アンマン及びその郊外と地方都市において下記の各項目に関する情報収集を実施した。なお、当団体では特に教育分野と子ども保護分野に焦点を当てる方針とした。
(1)対象地域における基礎データ
  1) 各主要都市におけるイラク避難民の世帯数
 
UNHCRによると、現在までにヨルダンのイラク避難民の数は75万人に上るとされている。但し、ヨルダン政府によると、その数は40万人未満であるとされるなど、その数にばらつきがあり、各データの明確な根拠が確認された訳ではない。なお、避難民の半数以上が18歳未満の子どもであるとされる。
表1は、RAIIを通じ入手した、国内の主要都市におけるイラク避難民世帯数を示す。但しこれらは、RAIIに登録している世帯数のみを示すものである。特に、アンマンやイルビッド等の都市部には、より多くのイラク避難民が滞在していると考えられる。但し、人々は生活費がより安価な地方部へ徐々に移動しているという話も聞かれる。
  表1 主要都市におけるイラク避難民数
都市 アンマンから
の距離(km)
人口 イラク避難民
世帯数*2
イラク避難民数
(推定)*3
アンマン(Amman) 1,800,000 >3,000〜4,000 >20,000
イルビッド(Irbid) 89 500,000 >200 >1,000
マダバ(Madaba) 32 50,000 >300 >1,500
マフラック(Mafraq) 70 32,000 >100 >500
フヘイス(Fuheis)*1 15 15,000 >300 >1,500
サハブ(Sahab)*1 10 10,000 >100 >500
アズラック(Azraq) 103 6,000 >40 >200
 
注1) フヘイスとサハブはアンマン郊外に位置する
注2) RAIIへの登録数のみを示している
注3) 1世帯5人平均として計算している
(2)イラク人避難民の状況
  1)人々の避難生活状況
 
避難民のうち10%程度はもともと裕福な家庭であり、現段階においては緊急的な支援を必ずしも必要としている訳ではないと言われている。2003年にイラク国内で紛争が始まった当初は、避難民の多くを前政府関係者が主に占めていた。紛争が長引くにつれ、裕福な世帯が周辺国への避難を開始するようになり、やがて(裕福でない)一般の市民も避難を行うようになった。
避難民の中には、かつてはイラク社会において高い地位にいた者や、高学歴の者も多数含まれていると言われる。但し、そうした人々が同様の待遇や身分においてヨルダンで職を見つけることは容易ではない。実際、避難民の多くが貯蓄を少しずつ切り崩しながら生活せざるを得ない状況にある。
ヨルダンにおけるイラク避難民の75%が不法滞在者であると言われ、その大部分がヨルダン社会においてなるべく目立たないようにひっそりと生活を送っている(そのため、調査実施時においてイラク避難民にコンタクトを取るのは非常に困難であった)。避難民キャンプ等は特に存在せず、ヨルダン人市民と同様にごく普通の住居で生活をしている。イラク人同士の間でコミュニティを形成して、互いに助け合いながら生活を送っている。
  2)子ども保護分野のニーズ
 
イラク避難民の中でも青少年らの置かれた状況は非常に過酷である。家族を紛争や暴力の中で突然失ったり、また自らの生活環境が破壊されるのを目の当たりにして、心に大きな傷を負っている。中には暴力を受けたりした子どもも少なくなく、そうした子どもの多くがトラウマを抱えている。
これまで、上述した子どもたちを対象とした心理社会的ケア等の支援援はほとんど行われてこなかった。また、イラク人の子どもの多くが未だに学校に通うことができていないため(後述)、毎日することもなく家に閉じこもっており、同年代の者たちと社会生活を送る機会が奪われているなど、青少年らは成長過程において多大なる影響を受けており、危機的な状況に置かれている。
  3)教育分野のニーズ
 
イラク避難民75万人のうち約20万人が学齢期の子どもであるとされており、これまで、滞在許可証を有していない者は公立学校への通学が許可されていなかった。私立学校への通学に関しては、滞在許可証がなくても登録料や学費さえ払えば問題はなかったが、公立学校と比較して費用が10倍以上もするなど高額であった。結果として、イラク人の子どもの多くが学校に通うことができない状況にあった。
ヨルダン教育省が8月6日に出した声明によると、8月19日の新年度以降は、イラク人の子どもが滞在許可証の保有の有無に係わらず、公立学校に入学できるようになった。但し、初等教育・中等教育レベルで一学期あたりそれぞれ20JD(約3,500円)、30JD(約5,200円)の授業料と教科書購入費を払わなければならない。これまで14,000人のイラク人の子どもがヨルダンの教育機関に通学しており、新学年開始以降は新たに50,000人のイラク人の子どもが通学できるようになると見込まれている。これにより、イラク人の子どもを取り巻く教育環境において改善が見られるものと期待される。しかしながら、諸要因により全員が教育にアクセスできるとは限らないため、未だ予断を許さない。
(3)ヨルダン政府の対応
 
ヨルダン政府では、イラクからの避難民を「難民」としてではなく、「一時的なゲスト」として迎える方針としている。そのため、これらの人々に対して何らかの支援が行われるということはこれまで全くなかった。現段階で、これらの人々の75%が不法滞在者であると言われており(上述)、実際、銀行口座において15万米ドル相当の残高がないと滞在許可証が更新されないこととなっている。
現段階においては、ヨルダン入りを希望するイラク人は国境地帯で足止めされたり、あるいは空港で入国できず追い返されたりするなど、新たにヨルダンに入国するイラク避難民数はほぼゼロと言われている。
街中で警官等に身分証明書の確認を求められ、強制送還の脅しを受ける者もいるとの報告が一部でなされている。
7月26日にはイラク避難民を受け入れている周辺国会合がアンマンで開催され、イラク、ヨルダン、シリア、エジプトや国際赤十字・赤新月社(ICRC)等もメンバーとして参加した他、日本、アメリカ、英国、トルコ、イラン等もオブザーバーとして出席した。この会合では、ヨルダン政府がイラク避難民支援に関する具体的な政策方針等を表明しなかったため、具体的な進展は特に見られなかった。
(4)国際機関等による支援状況
 
これまで、ヨルダン政府が一貫して、ヨルダンに避難するイラク人を「難民」と認めてこなかったことから、UNCHRやUNICEF、IOMといった国際機関としても、ヨルダン国内におけるイラク避難民に対する明確な支援方針等を策定することが非常に困難であり、また実際の支援活動の実施にもなかなか手をつけられない状況にあった。
7月26日に開催されたイラク周辺国会合では、イラク避難民への支援を表明している国々への約束履行の確認等が行われた。例えば、アメリカ政府は2007年において、UNHCRに対し3,700万ドル、ICRCに対し1,850万ドル、12のNGOに対し計1,290万ドルの拠出を現段階で表明している。
7月27日、UNCHRとUNICEFは連名で、イラク周辺国におけるイラク人の子どもの通学支援として、1.29億ドル拠出の共同アピールを表明した。
(5)他機関との調整及び連携
 
1)政府機関との連携
政府機関であるHigher Council for Youth(HCY)と協議する場を複数回にわたり設けた(ハシミテ慈善協会を通じてHCYの紹介を受けた)。HCYはもともとはMinistry of Youth and Sportsであったが、2003年の組織改変以降は首相府に直結した組織となり、現在はヨルダン国内で87ヵ所の公立のユースセンター等の運営を管轄している。
ヨルダン国内の政治的状況(すなわちヨルダン政府の方針)により、イラク人のみを対象とする支援活動を展開することは非常に困難となっている。この点を踏まえ、HCY管轄の公立ユースセンターにおいてヨルダン人及びイラク人の青少年を対象とした支援活動の実施を提案したところ合意を得られた他、各方面での協力や、NGO登録等においても便宜供与を図ってもらえる旨の確約を得るに至っている。従って、HCY及びHCY管轄のユースセンターを公式なパートナー機関とする計画である。
事業サイトとして、イラク避難民が少なからず居住しているフヘイス及びアズラック(上述)におけるユースセンターでの活動の実施可能性について既に協議済みである。今後、事業内容の詳細に関しては、HCYとの間で連絡調整を継続して行い、密接な連携の下で活動実施の詳細を詰めていく予定である。
 
2)日本大使館等との調整
在ヨルダン日本大使館を他のJPF参加団体と共に訪問し、今回の調査結果の報告及び今後の活動計画等について伝えた。今後も必要に応じて密に連絡を取りつつ各種報告等を行う予定である。また、新規事業実施の手続き等に係るヨルダン政府との調整は、JPF及び日本大使館を通じて実施する予定である。
 
3)他機関との連携
今回の調査実施において多大なる協力を得たイラクのNGOであるRAIIとの(非公式の)連携を予定している。各方面での協力やイラク避難民への働きかけ等の便宜供与を図ってもらえる旨の確約を得るに至っている。
事業実施においては、UNICEF等を含む他の援助実施機関との連携を重視し、関連のコーディネーション会合への出席や活動地域・内容の重複がないよう留意していく点が確認された。また今後、JPF参加団体との連絡調整や情報共有を密に行っていく点も確認された。
(6)ロジスティックス
 
事務所設置はアンマンまたはフヘイスにおいて行う予定となっている。交通の便を考慮して、車両借料を予定している。通信事情に関しては特に問題がないものと判断された。
現地スタッフ雇用に関しても既に一部人選済みとなっている。
(7)安全・危機管理
 
外務省のヨルダンに対する渡航情報(危険情報)は、調査実施時点においてカテゴリー1「十分注意してください。」とされていたなど、ヨルダンにおける治安は現段階で概ね問題ないものと判断された。
今後の事業実施が想定されるフヘイス及びアズラックにおいても特に大きな治安上の問題や懸念事項等がないことが確認された。
事業実施に際しては、関連機関・団体との連絡を密に取りつつ安全面での情報収集に努め、何らかの懸念が生じた場合には、関連機関・団体の勧告等に十分配慮した上で、適切な対処を行っていくことが確認された。
【総括】
 上述の調査結果に基づき、イラク避難民の青少年の保護、教育、心理社会的ケアの分野において支援ニーズがある点、更に活動の実施可能性が高い点が確認された。ヨルダン政府の方針等にも基づき、今後、ヨルダンの政府機関であるHCY及びHCY管轄の公立ユースセンターを公式なパートナー機関とし、またイラクのNGOであるRAIIと協力関係を構築する形において、事業形成を行う計画である。具体的には、アンマン近郊のフヘイス及びアズラックの公立ユースセンター2ヵ所において、ヨルダン人及びイラク人の青少年を対象に、子どもと青少年の保護、教育、心理社会的ケアの分野における支援活動を中心とした新規事業を申請する予定である。

日本国際民間協力会(NICCO)

(1)調査地域
 NICCOは当会の事務所を置くアンマン市を拠点に、アンマン市東部(ジャバル・アンマン、ジャバル・ホセイン、ジャバル・アフダック)、アンマン市郊外マルカ、近郊都市のザルカ及びシリア国境に近いイルビットでイラク避難民の家庭を訪問し聞き取り調査を行った。平行して、在ヨルダン日本大使館、現地行政機関、国際機関、国際NGO、現地NGO、医療施設や宗教施設などからの情報収集及び活動視察を行うと共に、事業実施における連携の調整を行った。また、同時に調査を行ったJPF事務局及びSCJ、KnKとは密に情報を交換し、効率的な調査の実施を図った。
(2)調査内容
  A)イラク避難民の状況に関する情報収集
 
 上記【調査工程】に記載した行政機関、団体との会合、教育・保健分野のコーディネーション会合への参加及び同時に調査を行ったSCJ、KnKとの情報交換を通じ、イラク避難民の情報を収集した。
  (イ)イラク避難民の状況
 
1991年の湾岸戦争を契機に避難して来た者から2003年のフセイン政権崩壊前後及びその後の混乱を経て避難して来た者までいるが、特に2003年以後に避難して来た人々は、貧困層に属する割合が高く、また民族的にも、スンニ派とシーア派の対立の余波を受け、マイノリティの人々の割合が高いとされている。
経済状況に関しては、富裕層/中間層/貧困層の3段階に別れており、富裕層のイラク人は非常に裕福な生活を送り、支援の必要は全くない。彼らの生活ぶりが目立つ反面、困窮するイラク人が隠れて生活を送るため、イラク人に対する支援は必要ないと感じているヨルダン人も多い。現時点ではかろうじて貯蓄や送金に頼って生活を営める中間層の経済状況は悪化する一方であり、実態が不明確な貧困層の生活水準に至っては、極めて低いものだろうと推測されている。
イラク避難民に関する基礎情報、避難民の生活状況に関し不確定な情報が飛び交う中、確実であるのは、今後貯蓄や送金に頼る不安定なイラク避難民の生活状況は悪化の一途をたどること、現在のイラク情勢からイラク避難民問題には中長期的な対策が必要とされていること、問題が更に深刻化する前に、潜在的な問題を事前に防止し、ヨルダン政府の負担を軽減するために現時点で何らかの対策をとることが必要であること、などである。
  (ロ)ヨルダン政府の立場
 
ヨルダン政府としては、実数や実態の不明な外国人を、公共サービスから締め出した状況で中長期的に社会の中に放置しておくことは、政府に不満を抱く層を内部に抱え込むこととなり、治安対策上も受け入れ難いが、逆に十分な公共サービスを提供することも、さらなる避難民をヨルダンに惹きつけることに繋がるため避けなければならず、ジレンマを抱えている面がある。
同国にはパレスチナ難民の受け入れに関して過去の経緯と事情があり、その多くにヨルダン国籍を付与した結果、現在国民の80%以上がパレスチナ系となっていることから、イラク人については同じ政策は繰り返さないことを、常に明確なメッセージとして打ち出す必要に迫られていると考えられる。
2005年のアンマンにおけるテロ以降、イラク人に対するヨルダン政府の対応及びヨルダン人一般の世論が硬化している面がある。内務省が治安維持の観点から管理を強める一方、聞き取りを行ったイラク人からも、それ以後周囲のヨルダン人から差別的な扱いを受けることが多くなったとの声も聞かれた。
  (ハ)イラク避難民の流入がヨルダンに与える影響
 
人口600万人のヨルダンに対して40〜70万人とも言われる新たな人口の流入はヨルダン社会に著しい衝撃を与えており、政府レベルでは教育、医療、治安、水や電気の供給などのインフラの限界を非常に懸念している。
ヨルダンの一般住民レベルでは、家賃を含む物価の上昇が確認されており、ヨルダン人がイラン人避難民に対して反感を抱く原因となっている。
従来イラクはヨルダンよりも豊かな国であるという理解、一部のイラク人富裕層の振る舞いとそれに伴う物価の上昇、2005年のアンマンでのテロ等により、ヨルダン人のイラク人に対するイメージは決してよくはなく、支援を必要とする貧困層が存在することは一般にはまったく知られていない。よって、今後両国民の相互理解を進めることも大きな課題となっている。
  B)イラク避難民に対する支援の状況
 
(イ)現地政府の対応、今後の方針
 
ヨルダン政府はイラク人を難民と認定することはないため(そもそも難民条約の締結国ではない)、通常難民が受けることのできる基礎的社会保障やサービスは調査期間中には享受されていなかった。
しかし、ヨルダン政府は、難民の地位を与えないながらも、公立学校へのイラク人児童の受け入れや保健医療サービスの拡大を発表し、イラク避難民支援に前向きな姿勢を見せ始めている。
ただし、イラク避難民に対する支援は、ヨルダン政府が提示する枠組の中で、ヨルダン社会全体のシステムの強化を通して行うよう政府から求められており、対象をイラク避難民に限定した支援活動は認めないとしている。
従来各省庁が個別に対応している状況であったが、07年8月より計画・国際協力省が中心となり、内務省、外務省、社会開発省、教育省、保健省を取りまとめて一貫した対応を開始している。
国際NGOの活動については、NGO登録を行っていない団体の活動は基本的に認めておらず、また従来その手続きは非常に時間を要するものとなっている。
  (ロ)国際機関の動向
 
UNICEF、UNHCRが国際NGOを取りまとめる形で、ヨルダン政府と支援の枠組みや計画について粘り強い交渉を続けており、国際社会に対してもアピールを行っている。具体的な支援計画や実施については、現在も策定中である。
UNHCRは、独自にAsylum Seekerと認定するレターをイラク避難民に発行している他、国際NGO数団体とIP契約を結び、物資配布、医療支援等の分野で独自のプログラムを実施している。
  (ハ)国際NGO、現地NGO、その他の団体の支援状況
 
国際NGOに関しては、Save the Children, Care International, Mercy Corps、Caritas等が物資配布、コミュニティセンター支援、医療サービスなどを実施中である。
現地NGOに関しては、UNHCRなどの国際機関とIP契約を結び、イラク人支援に特化した活動を始めた団体や、各地域のイラク人居住者の地域や人口についての調査を始めた団体がある。
宗教施設については、キリスト教会が地域のイラク人避難民に対してクーポンの配給やノンフォーマル教育の場の提供などを行い、イラク避難民の交流、情報交換の場として機能している例が見られた。
  (ニ)支援が必要な分野
 
教育(校舎の増築・修築・修理、学用品の補充、教師の増加による給与補助、教師のトレーニング、ノンフォーマル教育、学校教育を一時中断した生徒に対する補修など)
保健(初期医療、予防接種、母子保健、薬品の提供、保健センターの増設、障害者に対するケア)
心理的、心理社会的ケア(トラウマのケア、異文化間理解、平和的共存)
社会的弱者(寡婦、孤児、障害者等)への物資の提供
法的ステータスの保障
  (ホ)支援の方法、実施可能性
 
上述の通り、ヨルダン政府の提示する枠組みの下、計画・国際協力省の承認を得て、ヨルダン全体の社会システムの強化支援を行う中で、イラク避難民の支援を行う必要がある。
支援対象をイラク避難民と限定することはせず、ヨルダン人その他の国籍の人を含んだ、貧困層を対象とするが、可能な限りイラク人避難民が多いと想定される地域で支援を実施する。
コーディネーション会合に参加の上で、他機関・NGOとの調整を確実に行い、支援活動を実施する。
ヨルダンにおけるNGO登録は活動のためには必須であるため、管轄の社会開発省において早急に手続きを行う必要がある。
  C)イラク避難民からの聞き取りによるニーズ調査
 
(イ)聞き取り調査実施地域
 
   以下の地域において、6日間にわたり25件(うち2件はヨルダン人貧困家庭)の家庭を訪問し、直接聞き取り調査を行った。
 アンマン市東部 6件(ジャバル・アンマン2件、ジャバル・ホセイン1件、ジャバル・アフダック3件)、マルカ 6件、イルビッド3件、ザルカ10件
  (ロ)聞き取り調査により確認されたニーズ
 
法的ステータスの保障(難民認定、第3国への移住、労働許可)
教育(公立学校への入学許可、大学進学や私立学校への入学における授業料補助)
医療(心臓病や爆撃による負傷など高度医療の治療費や手術費、薬代の補助)
金銭的援助(家賃補助)
心理的ケア(心理的ケアの必要性を自覚している大人もいるのだが、カウンセリングの費用が高いことから、治療を受けられていない。多くが高血圧、動機、不眠、常時の不安を患っている。)
  (ハ)聞き取り調査により確認されたイラク避難民をとりまく状況
 
避難の理由として、2003年以降の避難民に関しては、治安の悪化と直接的な脅迫、誘拐、暴力の直接的な経験や家族が行方不明になる、殺される、家が爆破されるなどを理由にヨルダンへ逃れてきており、現在も恐怖の記憶と闘っている。また、2003年以前の避難民に関しては、経済的困窮、政治的立場、治安の悪化を理由としている。
収入源は、イラクで家・土地・家財を売って得た貯金や、海外からの送金であり、地方都市では農業、工場労働、製造などの分野で非合法的・不定期に就労しているケースが見られた。また、看護師や医者として低賃金ではあるが合法的に就労しているケースも見られた。自力で準備できるお金が尽きた時点で、子供の教育を中断する、外部に援助を求めるケースが多い。
外部との交流に関しては、アンマン市内においては、不法滞在の発覚や継続的な脅迫を恐れて意図的に外出や外部との接触を避けて暮らしている。そのため、一部教会での集会などを除き、イラク人同士のコミュニティも確立されておらず、避難生活を数年間送っている者であっても数件の近隣住民のみを知るという状況である。近隣のイラク避難民同士が支援活動の情報交換をし、食料などを助け合い生活しているが、外部との接触の機会がない家族は、支援活動を知らず、さらなる困窮を極めている。
アンマン市内居住のイラク避難民と地方都市の避難民を比較すると、地方都市部では外出を恐れることがなく自由に外部と接触していること、ヨルダン人とは良好な関係にあるということ、非合法的・不定期の仕事を持ち、多くの児童が公立・私立学校にて教育を受けているケースが多いという特徴があった。
支援の利用状況に関しては、Italian HospitalとCaritasの活動が最も知られており、利用されていた。また、聞き取り調査対象の大多数の避難民がUNHCRのAsylum Seeker Certificateを持っていた。キリスト教徒に関しては教会が提供するサービスを利用する確率が高かった一方、イスラム教のモスクについては、キリスト教の教会ほど積極的に支援をしていないとの声がイラク人から聞かれたほか、モスクによってはシーア派のイラク人には支援をしない等、宗派対立が持ち込まれた例も聞かれた。
心理的状況に関しては、イラクにおける恐怖体験に加え、避難地でのストレスと不安が募る生活により、精神的疲労が相当に蓄積していた。加えて、仕事ができず家に籠もらなくてはいけない状況に対するフラストレーション、イラクにおいては高い地位にあったにもかかわらず援助を求め頼らざるを得ないことに対する憤りや恥ずかしさを訴えている。
ヨルダン国内のイラク避難民の移動の動向に関しては、家賃が高いアンマン市から、家賃が低いザルカやイルビットなどの地方都市に移動するというケースが確認された。また、既存のパレスチナ難民キャンプに多くのイラク人が流入していると聞かれた。
   
  D)事業実施に向けた調整
  (イ)現地行政との調整・連携
 
ヨルダン政府の方針に沿い、計画・国際協力省の承認を受け、事業の形成と実施にあたる。
NGO登録は現在申請中であり、日本大使館のサポートを受けつつ、進捗をフォローしている。
  (ロ)国際機関との調整・連携
 
関係分野の調整MTGに出席し、他機関と連携・調整・情報交換を図りながら事業形成・実施に当たる。
  (ハ)ローカルNGOとの連携の調整
 
コミュニティを基盤に活動するローカルNGOを数団体訪問し、その活動内容、キャパシティ、ガバナンス等について確認を行った。その中で、専従の心理学者を雇用し、心理社会的ケア実施の経験があり、加えてコミュニティに根差した活動を実施し成果をあげているFamily Guidance and Awareness Center(ザルカ)と連携し事業を行う方向で調整を行うこととなった。
  (ニ)在ヨルダン日本大使館
 
日本大使館からの要請に沿い、JPF事務局・参加NGOが連携し窓口を一本化して対応し、更なる協力関係を築き、効果的な支援活動の実施を図る。
  (ホ)他の日本NGO、JPF事務局
 
今回の調査では、同時に現地入りしたJPF事務局や他NGOと密に情報交換を行っており、事業の実施に当たっても、引き続き、情報交換・協力・連携の姿勢を強化する。また、現地政府や在ヨルダン日本国大使館に対しては、窓口を一本化して対応する。
  (ヘ)ロジスティクス
 
当会はヨルダンの農村開発のため、2000年よりヨルダン国内に事務所を設置の上事業を実施しているが、現在の事務所はヨルダン農業省内にあり別事業に用いることは不可能である。よって、今回の支援の実施に当たっては新たに事務所をアンマンに構え、国際スタッフ、ローカルスタッフ、車両、機材等を整えた上で事業の実施にあたる。
(3)総括
 
 以上の調査結果に基づき、NICCOはヨルダン政府、国際機関、他のNGO等と調整の上、ヨルダンの近郊都市ザルカにおいて、現地NGO「Family Guidance and Awareness Center」と連携し、ヨルダン人とイラク人の平和的共存を支援するため、小学校高学年を対象とした心理社会的ケアのプログラムの実施と、教師やワーカーに対するワークショップを行うことを計画している。実施に当たっては、教育省、UNICEF、SCJ等と連携し、国全体のプログラムに沿う中で、モデルプログラムとして実施する。
  同時に同地区において、貧困層を対象とした物資の配布や、教育分野におけるハード面での支援も行う方向で調整を行う。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)

【調査地域】
 SCJは、イラク避難民の現状把握を行うため国際機関、政府機関、NGO組織の聞き取り調査、そして避難民が多く居住している東アンマン地域の3箇所およびアンマン市内にてイラク人、ヨルダン人支援者を対象に聞き取り調査・活動視察を行った。その結果、教育分野でのニーズ、特に子どもの学校機関へのアクセスに関するニーズが突出して高い状況が観察された※11。以下はこれらの聞き取り・視察を通して、子どもと若者の生活状況および就学アクセス、教育支援状況に関して得られた情報をまとめたものである。

※11 食糧やお金、物資、医療に関するニーズも高いが、それよりも子どもが学校に行けるようにして欲しい、学校に行っていないと犯罪に巻き込まれてしまわないか心配だ、という声がイラク人の親から多く出ている。このような親の中にはイラクから持ち出した数少ない宝石や貴金属を売ったり、路上でタバコなどを売ったりしながら、子どもの学費を捻出している者が多い。
【調査内容】
 
(1)イラク避難民の子どもと若者の教育アクセス
シリア、ヨルダン、レバノンに国外避難しているイラク人の半数以上は18歳未満の子どもたちであり、そのうち学校へのアクセスがなく、今年の新学期の編入を必要としている子どもは約15万5千人、このように編入する子どもの数に対応するために必要な教員の数は4000人と言われている※12
ヨルダンにて新学期から受け入れを開始する子どもの数は5万人と予測されている。この中には長期に渡り学校に行っていないため、補習をしないと復学できない子どもは含まれていない。
スクールバスや交通費がないため、学校へ通うことができないケースがある。
学費、制服・教材および学校設備が不足している。
学校設備が大幅に不足している(当面はダブルシフトで対応する計画が出ている)。
ヨルダン全域で教員の能力が不足しているため、教職員の拡充と指導者研修のニーズが高い。
心に傷を負った子どもが多いため、心理社会ケアにおける指導者研修について要請が出ている。
小学生以上の子どもの教育制度はあるが、就学前年齢の子どもを受け入れる制度が整っていないため、受け入れとなる施設が少ない。
※12 Immediate Needs for Iraqi Children in Iraq and Neighbouring Countries, UNICEF, May 2007
(2)イラク避難民の子どもと若者の生活状況※13
 
父親か母親かのどちらかを失ったまたは危険回避のため別れて暮らしている。
1回ないし2回以上の誘拐被害に遭い、それを避けるためにヨルダンへ逃げてきている。
ヨルダンでは主に貧困地区の限られた居住空間にて多人数が居住し、健康・衛生状態を崩している。
暴力の経験や困窮、追い詰められた生活環境から心に多大な負担と傷を負っているが、適切なケアを受けていない。
行動が暴力的になったり、セクシュアルハラスメントをしたり、おねしょをするようになったり、子どもたちに心身的(psychosomatic)行動変容が見られる。
子どもの生活時間に変化が出てきている。(学校に行っていない時間の過ごし方の変化:路上での生活時間が多くなっている、犯罪に巻き込まれるなど。)
子どもが安心して勉強できる環境を整えることは、子どもにとっての「通常状態」を取り戻す支援につながる※14
 
※13 東アンマン地域Nuzhaにてイラク人の就学前幼児100人を受け入れているセーブ・ザ・チルドレン世界連盟スタッフへの聞き取り調査より。
※14 Launch of Joint UNICEF-UNHCR Education appeal for Iraqi Children, Jordan, 31 July 2007
(3)ヨルダンおよび中東地域の若者の抱える問題
 
中東は30歳以下の人口比率が非常に高く、ヨルダンは人口の70%以上が30歳以下である。
若者の失業率が高いことが中東全体の国家の経済に影響を与えているが、これらに対応する教育・人材育成が求められている。
またヨルダンでは就学前年齢の子どもを受け入れる制度が整っていないため、国際機関やNGOにシステム強化の要請が出ている※15
今回イラク避難民対応にて子どもと若者の教育支援を行うことはヨルダンにとっても必要とされる共通の課題となっている (Win-win situationの構図) 。
 
※15 Educational Reform for Knowledge and Economy (ErfKE: 知識と経済のための教育改革 仮訳)というヨルダンの就学前の幼児から高等教育における若者すべてを対象とした、教育システム全体を改革するプログラムがUSAID、CIDA、WB、JICAなどのドナーグループにより行われている。その中で就学前の幼児を受け入れる教育システムの整備が施設建設・増築、教職員指導者育成、教材・機材補強・強化を含め現在進行中である。今回のイラク人子ども教育支援に関しては、このヨルダンの教育改革計画に沿って行う必要がでてきた。
(4)関係機関との調整
  (イ) 政府調整機関との調整
 
ヨルダン政府6省との合同ミーティングにて、各省庁に国際援助を受け入れるための調整窓口が設置される予定である。
教育省は調整のための委員会を設置し、UNICEF、UNHCR、SCを含めたリーディングエージェンシーを通して教育支援の役割分担と調整が行われる予定である。このため随時情報を入手し、今後の事業計画へ結び付けていく。
  (ロ)国際援助機関・NGOとの調整
 
ヨルダンにおけるイラク避難民支援においてはドナー間の調整が行われている。イラク避難民の支援について教育分野のドナー調整役となっているUNICEFは、教育クラスターミーティングを定期的に開いており、支援に重複がないように注力している。
セーブ・ザ・チルドレン世界連盟事務所は、イラクの子どもたちを対象にコミュニティサポートを通じてイラク人の子ども、若者、そして親を通じた教育サポート活動を2007年2月より開始し、現在までに約4000人の子どもに様々な形態で教育支援を行っている。イラク人の子どもの親をボランティアとし、人目を避けて暮らしているイラク人へ情報を伝えるアウトリーチ活動を行っている。
  イラク人ボランティアの協力により得られた情報・ニーズを参考に、セーブ・ザ・チルドレン世界連盟は3歳から24歳までの子どもと若者(イラク人・ヨルダン人)を対象にしたプログラム(Ta' leemアラビア語で【学習】の意味)を提案した。ヨルダン教育省、教育分野ドナー(UNICEF, UNHCR)はTa' leemへの連携を検討中である※16。(以下表にて活動内容およびドナー間連携について参考のこと。)
  イラク避難民・ヨルダンの子どもを対象とした中東地域教育支援の枠組み(Ta' leem)
 
対象年齢 3歳〜6歳 6歳〜14歳 14歳〜24歳
活動内容 教育支援の施設・修復・増築・建設
教職員、親、コミュニティにおける指導者育成
共生のためのプログラム
誘拐や暴力を経験し心に傷を負った子どものプログラム
心理社会ケア対応可能な教職員指導者育成
教育を受けられない子ども・若者のためのノンフォーマル教育
教材・機材支援
管轄・調整 教育省・UNICEF
主なドナー JPF/SCJ UNHCR BPRM
*注) この表の分担および支援活動内容は関心表明段階のものも含まれる。
 
※16 Ta' leemはイラク避難民を受け入れているエジプト、シリア、レバノン、ヨルダンで立ち上がる予定であり、それぞれの国において国連組織やNGOと連携している。
 
(ハ)NGO間の調整:心理社会的ケア
 
今回の調査ではイラク避難民の子どもの心理社会ケアが必要とされていること、および受け入れ側の教職員の指導者養成、一緒に勉強するヨルダン人の子どもにおいても心理社会ケアのニーズがあることが観察された。
JPF初動調査に参加したNGOは教育分野での支援活動にて、心理社会ケアを活動に含める検討をしている。NICCOとSCJは裨益効果を高めるためにも計画段階から連携(対象・地域など)および情報交換、サポートの可能性について話し合いを行い、さらにKnKにおいても随時情報交換を行っている。
  (ニ)日本大使館、JICA等との調整
 
日本大使館は今回初動調査においてイラク・中東情勢について情報提供の場を設定していただいた。ヨルダン政府が行ったイラク避難民の受け入れ関係国による会議(7月26日アンマン)へは、NGOが参加できなかった背景を考慮し、大使館からタイムリーに内容や支援方針の方向性についてブリーフィングをしてもらうなど、日本大使館のNGOに対するサポートに深く感謝したい。今後も刻々と変わり行くイラク情勢、それにより影響を受けるヨルダンの国内情勢などについて、大使館と定期的な連絡を持ち、連携できるようにしていく予定である。
大使館からはJPFから支援を受ける日本のNGOにおいても連携をするよう助言があり、NGOの間での情報交換も整えていく予定である。
JICAヨルダン事務所およびイラク担当班へも定期的な事業報告、及び情報の共有を実施する予定である。
(5)活動実施上のロジスティクスの調査
 
SCJはセーブ・ザ・チルドレン世界連盟事務所において事務所設置、スタッフ配置を行う。SCJの独立したスペースとフルタイムスタッフ(インターナショナルおよびローカル)を配置し、プロジェクト管理を行う予定である。
学校施設修復・増築のための資材調達・用地・スケジュールなどについては事業申請書を参照のこと。

【総括】
 ヨルダンにおいては就学前の幼児の教育システムが脆弱であり、教育省はドナーと連携した幼稚園システム強化計画中である。このため就学前の幼児はイラク人・ヨルダン人ともに受け皿が不足している状態である。SCJはヨルダンでのTa' leemプロジェクトにおいて、ほかのドナーと連携しながら、特に受け入れ体制が整っていない就学前幼児の教育システム支援を念頭に、施設修復・増築、および教職員、親、コミュニティにおける共生のための指導者育成、誘拐や暴力を経験し心に傷を負った幼児をケアするための指導者プログラムなどの事業を検討する予定である。

3. 中長期的な支援戦略及び計画

 イラク情勢は先の見えない状況が続いており、近い将来に状況が好転する可能性は低いと言わざるを得ない。よってヨルダンに滞在するイラク避難民がイラクに帰還できる見込みは、当面は不明瞭であるという前提に立ち、計画を立案する必要がある。
 そして支援活動は、初期の支援計画立案から中長期的支援に至るまで、ヨルダン政府と国連・NGOが協議して作り上げる枠組みと計画の中において実施する必要があり、その時期は未だ明確とはなってはいないものの、支援を完了する時期は、ヨルダンの行政機関がインフラと政策執行面で能力を高め、イラク避難民の受け入れに単独で対応できるようになった時であると言える。
 今回の調査については、ヨルダン政府の活動方針が将に決定されようとする時期に現地に入ったことから、ヨルダン政府との協議や各種コーディネーション会合等を通じて、政府による政策の立案段階より協議に参加することが可能となっている。そして参加3団体は、当初よりJPF事務局を介して連携して調査を実施し、日程の都合上遅れて調査を実施したCIJとも情報の共有と連携は行いつつ案件形成を進めており、その意味で、JPFが一体のものとしてヨルダン政府、国連、国際NGOと協調しながら、日本のNGOのプレゼンスを確保しつつ、中長期に支援を実施する可能性が見えてきていると言える。
  KnK
   現在のイラク国内の緊迫した社会情勢に鑑みると、ヨルダンを含む周辺国におけるイラク人の避難生活は長期化するものと予想される。人々の生活状況は概して厳しく、その更なる悪化が懸念されている。人々を取り巻く状況が改善され、より安定した環境においてベーシック・ヒューマン・ニーズ(BHN)が満たされた生活ができるようになるまでに多くの時間を要すると考えられることから、今後、中長期的な枠組みにおいて支援実施が可能な体制を構築することの重要性は高い。
 当団体では、まず6ヵ月の期間、上述した公立ユースセンター2ヵ所において、子どもと青少年の保護及び教育分野での支援事業実施を予定している。同時に、イラク避難民が置かれた状況に関する調査の実施も計画している。事業運営が順調に進んだ場合には、事業規模の拡大と、心理社会的ケアの分野における活動実施も計画している。また、長期的展望として、JPF以降の支援継続に際しては、他のドナーとの連携も視野に入れている。
  NICCO
   NICCOは従来ヨルダンにおいて農村開発事業を行っており、ヨルダンにおいて中長期的に活動を続ける方針自体は既定のものである。その中で、今回のイラク避難民の問題に対しては、ヨルダン政府と国連の支援の枠組みの中で、JPF加盟の他のNGO、JPF事務局、日本大使館等と連携しつつ、心理社会的ケアを中心に計画立案段階より関わり、過去にJPF事業として行った経験をフィードバックしながら一定のインパクトを持ち得る事業を行うことで、中長期的に国連と連携して事業を継続して行くことを想定している。
 現在教育分野では、心理社会的ケアを含むにソフト面ついてはUNICEFが、ハード面についてはUNHCRが担当することとなっており、さらにUNHCRは貧困層対策等のプログラムも実施している。NICCOはソフト及びハードの両面においてイラク避難民を支援することを計画しており、事業開始から1年間はJPF資金にて一定の実績を残しながら、上記国連機関との連携を深め、パートナーシップを模索していく。さらに、必要に応じて日本NGO連携無償やその他の資金をマッチングすることを検討し、混迷を深めるイラクの情勢に対して、ヨルダンにおいて可能な支援を継続して実施して行く方針である。
  SCJ
   イラク避難民の情勢は今後悪化する可能性が大きく、プログラムを開始し現地入りすることにより、イラク難民の詳しい状況が明らかになることが予測される。このため、イラク人や受け入れ側のヨルダン人の動向をチェックしながら、適宜プログラムの方向性を調整・管理する必要がある。また、支援の形態はイラク人とヨルダン人を対象とし、ヨルダンにおける教育改革を包括的に支援することになるため、緊急支援の枠組みに柔軟性を持たせた開発支援を念頭に事業計画する必要がある。システム支援の視点どのようにイラク人にも利益があるようにするか、戦略的に情報を集め、工夫をしていく必要があるだろう。そして教育分野の支援では子ども、教職員、親において心理社会ケアの指導者養成ニーズが高いため、心理社会ケアの要素を活動計画に含めることは必須である。
   ヨルダンで調査を実施したCIJを含めた4団体はいずれも心理社会的ケア、青少年活動、コミュニティ支援の分野で経験を有し、連携して支援を行う意思を有している他、SCJやCIJは、アライアンスを組む団体がコーディネーション会合において中心的な役割を果たしていることから、情報を取りやすい位置にある。さらに現地の日本大使館も非常に協力的な姿勢を見せており、今回のイラク避難民支援は、心理社会的ケアという一定の分野を軸にコーディネーションを行いつつ、JPF加盟NGOがまとまって一定の成果を提示することで、中長期的に国連との連携を深めて活動を継続していく環境が、かなりの程度整ったケースであると考えられる。
 各団体はJPF事業として、すでに各国で心理社会的ケア等の事業を実施した実績を持っていることから、今後ヨルダンという一国の政府が中長期的に計画・実施して行くイラク避難民の受け入れにおいて、JPFとしての知見を共有、活用して行くことで、ヨルダンの社会においても、また現地の援助コミュニティにおいても、一定のインパクトを与え、独自の貢献をなし得る位置にあると言える。

以上


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