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イラク難民人道支援
 (シリア)


●出張報告書
 ・第1回
  2007.11.12 - 11.28

 ・第2回
  2007.12.06 - 12.07

 ・第3回
  2008.01.19 - 01.31


●初動調査報告
 ・初動調査報告書
 (JPF事務局)

 ・初動調査報告書(JEN)


イラク難民人道支援(シリア)

イラク難民支援事業調査(シリア)報告書
2007年8月22日
JPF事務局
1. 調査実施体制

(1)調査者:高松幸司事務局長、山内麻里事業部員
(2)調査期間:8月13日(月)〜22日(水)
(3)調査地:ダマスカス市内、ダマスカス市郊外

2. 調査目的

(1)イラク周辺国におけるイラク難民の状況調査
(2)イラク難民支援に対するシリア政府機関、国際機関、NGOの支援対応状況調査
(3)参加NGOの支援案件形成に係る関係諸機関との調整業務、情報収集
(4)JPF対応計画の方針策定に係る情報収集

3. 調査行程

日程 訪問先等
8/13
(月)
10:55 成田発
16:05 ウィーン着
8/14
(火)
10:30 ウィーン発
15:00 ダマスカス着
8/15
(水)
10:30 在シリア日本国大使館
13:00 シリア外務省
14:30 UNICEF
16:00 JICA事務所
8/16
(木)
11:30 在シリア日本国大使館打ち合わせ
12:00 赤新月社担当国務大臣
14:30 UNHCR
16:00 Premiere Urgence関係者
8/17
(金)
11:45 在シリア日本国大使館
12:00  赤新月社総裁
  赤新月社関係者
8/18
(土)
9:00  フィールド調査(ジャラマーナ、サイイド・ゼイナブほか)
20:30  赤新月社総裁および事務局長との夕食会
8/19
(日)
9:45  在シリア大使館待ち合わせ
10:00  保健副大臣
12:00  教育副大臣
14:00  UNDP
8/20
(月)
11:15 在シリア日本国大使館報告
13:00 ホテル発
15:55 ダマスカス発
18:45 ウィーン着
8/21
(火)
14:05 ウィーン発
8/22
(水)
8:20  成田着

4. 調査結果

(1)概説

(イ) 国際援助コミュニティに対する支援要請
   イラク難民の存在とその流入が加速化していることによる政治・経済・社会的負担の重さについて、イラク政府当局がその深刻さを認識し、国際援助コミュニティとの協調を具体的に模索し始めたのは昨年末あたりからの趣であり、以来、国連人道三機関(UNHCR、UNICEF、WFP)を中心とする対応計画の策定が進められている。8月15日現在、シリア外務省によれば、イラク難民総数はシリア国民総数(1,836万人:2006年シリア統計局推定)の約10%に相当する約150万人と見積もられ、その総数は1日あたり約2,000人の割合で増加している趣。バッシャール大統領の公式表明により、シリア政府はアラブの同胞としてイラク難民を受け入れるとする立場を堅持しているが、第10次社会経済開発5ヵ年計画(2006−2010)により社会開発の基盤整備を進めている途上にあって、現状の推移は、同国が耐え得る臨界点に達しつつある状況を迎えていると言える。かかる状況に鑑み、シリア政府は4月17−18日ジュネーブで開催された「イラク難民及び国内避難民の支援に関する国際会合」、7月26日にアンマンで開催された「イラク難民ホスト国会合」、7月29-30日ダマスカスで開催された「イラク周辺国イラク難民保健問題閣僚級会合」等において、対応方針及び重点支援セクターを発表し、国際援助コミュニティに対する支援を要請している。
(ロ) シリア政府の対応方針
   シリア政府はイラク人難民に対し寛容な政策をとっている。アラブ人であれば入国のための査証を要求していないほか、シリアに入国する難民(イラクに加え、ソマリア、スーダン南部、レバノン、アフガニスタンなどからも難民を受け入れている)はシリア人と平等のサービスを享受できる※1
 先述の4月にジュネーブで開催された国際会議において120万人(当時)を対象にしたイラク難民の人道ニーズを提示している(添付(ハ))。そこでは、イラク難民のシリア国内における増加は、シリア人の生活のいたるところに多大な影響を与えているとし、不動産、食料、生活必需品の値段が高騰しており、政府により補助を受けている燃料やパンといったものも被害を受けているとした上で、経済ニーズ(発電機、公衆衛生施設、ごみのリサイクル施設など)、保健医療ニーズ(病院建設、がん治療薬、救急車など)、教育ニーズ(学校建設、学校用品など)、社会的ニーズ(母子家庭への資金提供、ケアセンターの設置、社会サービスセンター支援など)、治安ニーズ(地方警察本署の設置、難民対応官の訓練、警察の増加など)と、5つの分野の具体的ニーズを挙げ、国際社会からの理解と支援を要請している※2
  当初は、本国に帰ることを前提としているイラク難民の就業を許可していなかったシリア政府であるが、ジュネーブで出された人道ニーズには、雇用機会の提供もニーズの一つとされ、外務省側よりも雇用の提供を重視している旨発言があった。これは、イラク難民が所持していた資金が枯渇し始め、生活が困窮してきたことを政府側も深刻に受け止めていることを示している。
 イラク難民の問題に対し政府として包括的に取組む体制はまだとられていないようである。保健省は、イラク難民委員会があり関係諸団体から構成された委員会の調整を行っている由であるが、各省庁を横断したイラク難民に対応するための運営委員会はまだ存在していないとのことであり、また、政府と援助コミュニティの連絡調整会合も存在しないのが現状である。

※1 このような政府の方針に加え、生活費が他国と比較して安価であることから、大半のイラク人がシリアに向かう傾向にあり、シリア政府の大きな負担となりつつある。
※2 国際機関によれば、シリア政府に対する米国の制裁などにより国際社会からの支援はあまり集まっていない状況とのことであった。
(ハ) 国際援助コミュニティへの対応
   先のイラク戦争時やレバノン紛争の際に人道的な見地から国際援助コミュニティの支援を受け入れ、難民の庇護を行ったケースはあるものの、今般の支援要請のごとく、シリア政府が主体となって広く国際援助コミュニティの支援を要請する試みは初めてのケースと言える。現行の開発援助の仕組みを踏襲しつつ新しい対応の仕組みを組み上げる必要があることから、政府としての全体方針の策定、実行計画、関係当局の権限・関連、受け入れの手続き等、国連機関との調整や国際NGOの受け入れにあたっての対応の整理に数ヶ月の時間を要している趣。国際NGOの事業展開にかかる窓口はシリア赤新月社が一括して対応する体制が敷かれており、その他、団体登録については外務省、開発援助との関わりが生じる活動については関係各省、事業地の選定については内務省の許可をシリア赤新月社と通して得ることが必要とされる。基本的には、通常の開発援助の仕組みが適用されており(超法規的な対応措置が講じられている様子はない)、シリア赤新月社が窓口としての機能を新たに付与されたことから、同社の機能強化が喫緊の課題として意識されている。活動許認可の手続きのため5ヶ月ほどを要してなお事業着手に至っていないケースがほとんどであり、いち早く対応を準備した国連・国際NGOの懸念となっている。しかしながら、8月20日、既に活動許可の申請が承認された国際NGO(12団体)を対象とするMOUの説明会が予定されており、8月中には事業許可が交付される見通しが共有されていることから、活動の実体化に向けた手続きの進展が見込める状況にある。
 また、手続きに時間を要していることを除けば、シリア政府当局の対応は着実で透明性があり、治安も安定しており、物価が安く、第三者の干渉や賄賂を要求されることも少ないので、実施体制の確立において際立って困難な点はないという評価が概ねであった(国際NGO評)。
(ニ) 移動の制限・基礎データの不足
   イラク難民の居留地や国境周辺地域において調査活動を行うことについては、実質的な制限が課せられており、案件形成上のネックとなっている。国連機関においても、最も困難な点の一つは移動の制限である由。多くの国際NGOが事業計画をもとに許可申請をしているが、事業地を選定できていないケースが概ねの趣。その場合、シリア赤新月社とのMOUを経た後に、事業地の選定を関係各省と調整するプロセスとなる。国際NGOの支援活動が実体化し、国連の支援活動も本格化することにより、移動の制限が実質的に緩和されていくことが見込まれる。
 また、現段階では国連機関が認証できる包括的なアセスメントがなされていないものの、UNDPは世銀と協力した上で8月上旬にシリア外務省からニーズ・アセスメントを実施する許可を取得しており、(a)イラク難民増加によるシリアへの影響、(b)イラク難民の生活状況、(c)対応のギャップにかかる報告書を提出することになる由であり、この点についても、基礎データの充足については、漸次基礎データの精度が高められていくことが見込まれる。
(ホ) 国際機関
   現時点において、対応の枢要を担う人道三機関の中で中心的な役割を果たしているのはUNHCRである。シリア政府とのパイプ役(ローレンス所長)を務め、今年12月末までの予算措置を了し、ここ2−3ヶ月で事務所スタッフの増強も了している。現在の国際スタッフ数は約20名、近々、事務所の移転が予定されている。シリア国内で既に12団体のパートナーを有し、また、8団体の国際NGOとのIPによる事業計画がシリア政府当局の許認可を待っている状態。IPが想定されているINGOは、CARE、SCUK、PREMIERE EMERGENCE、イスラミック・リリーフ他の由。
 UNICEFは昨年11月、スーダン事務所からサーレム所長が着任し、以来、体制づくりが進められている。8月中旬には、5−6名の国際スタッフがイラク難民対応ユニットとして増強される予定であり、具体的な事業計画の立案が進められる見通し。今の時点で、予算措置は未了。INGOとの事業計画をもとに資金調達を働きかけが行われる見通し。
 WFPはUNHCRと連携して困窮イラク難民を対象に食糧支援を行っている。5月13日には、シリアに滞在する3万人のイラク難民に対する食糧援助を行うためのアピールを発表した。
 以上の現状より、当面はUNHCRとの連携を柱に、UNICEFの予算措置のタイミングを見計らいつつ、WFPも含めた複合的連携を目在して事業形成することが妥当と認められる。
 また、シリア側の対応能力を強化するという観点から、UNDPを中心として進められている「第10次社会経済開発5ヵ年計画」やその中でJICAが担う技術協力事業とのシナジーを勘案することにより、更なる事業効果を得る可能性が認められる。
(ヘ) 日本に対する期待
   日本および日本人に対する感情は良好であり、政府関係当局および赤新月社関係者の応対も極めて友好的なことは、事業展開に着手する上での大きな資産である。また、国際機関および国際NGOからも、日本の団体であるということが意味する優位性が広く認知されている。
 シリア政府において今般のイラク難民支援は、幾多のリスクをともないながら多数の国際NGOを受け入れる一大事業であり、関係者の意識も極めて高いものが感じられた。日本からの支援に対する期待は極めて高く、今次ミッションにおいても閣僚級の方々にご対応いただいたことは、その証左の一つと言える。事業の実体化に際して、その期待は概ね、(1)重点分野の活動を担うこと、(2)共有される達成目標の実現に向け信頼に足るパートナーであること、(3)シリア側の対応能力の向上に資すること、(4)国際NGOとシリア政府が協力するモデルとなること、(5)日本のNGOとシリア政府が協力するモデルとなること、以上の5点から構成される。
 一方で、高い期待は時として、過大な期待と過度な要求に繋がりかねないことから、実施NGOは自ら活動方針と計画を誤解なく伝え、関係各方面の理解を確認した上で、特に初期段階においては、慎重を期して事業展開にあたることが求められる。関係各方面により保有する期待の優先順位が異なり、その一つに重大な欠陥が生じた場合、全体としての事業展開に致命的な影響を与え得ることから、この点については十分に留意する必要が認められる。
(2)提言
(イ) シリア政府対応方針との整合
   基本的には一般的な開発援助の仕組みが準用されることから(超法規的な措置やイラク難民支援のための新法が制定された様子はうかがえない)、事業展開の認可はシリア政府対応方針との整合性が前提条件となる。ただし、地域ごとにセクターに分類された詳細な対応計画は策定されておらず、大まかな方針の下に、国連・国際NGOによるそれぞれの事業を包括的に管理するという手法が当面はとられる趣なので、事前に関係当局と十分な調整を行うことに留意することで、活動計画立案の主体性を担保することの困難さはさほど認められない。
(ロ) シリア開発計画との協調
   大半が各地の親戚縁者へ身を寄せ、また都市部へ浸透し、現在も増え続けている150万人のイラク難民に、新たな体制を敷いて対応することは不可能である。最も脆弱とされる難民が居住する地域への緊急援助に加え、水資源の管理・運営、教育機能の増強等、イラク難民が身を寄せる地域コミュニティの生活能力の向上を主眼にした対応が求められる。地域コミュニティの生活能力の向上においては、「第10次社会経済開発5ヵ年計画」との協調を勘案することが望まれる。
(ハ) JPFヨルダン事業との分離
   同じくイラク難民支援であり対応方針の類似性も認められるが、ヨルダン政府とシリア政府では、中東情勢に占める立ち位置、国際援助コミュニティとの関係、援助受け入れ体制等において大きな差異が認められ、JPF事業のくくりの中で同一プログラムとして運営するにあたっては、開始時期の設定においてずれが生じることが予期されるので、別プログラムとして扱うことが適当と考えられる。具体的には、シリア事業の開始時期はヨルダン事業より若干の遅れが見込まれる。
(ニ) 国際援助コミュニティとの協調
   シリア政府当局は、今般のイラク難民支援活動のように即効性が求められる事業において国際NGOと協働することは初めての経験となるので、総体的な援助戦略の適用や、支援活動の主体性、国際スタッフの査証、調達物品の免税措置、移動の制限等々において、それぞれのNGOが個別に対応することは混乱を招く要因になるので、国連機関と調整の上、シリアにおける国際援助コミュニティとしての調整機能を確立する必要がある。
 また、主要各国のNGOが活動する中で、特定の国に属するNGOが特別扱いされているような印象を与えないよう(具体的には日本のNGOが)、シリアにおける国際援助コミュニティにおいて必要かつ十分な情報の発信と共有に努める必要がある。
(ホ) 中期的対応計画の必要性
   国際NGO受け入れにかかるシリア政府の方針は、受け入れ団体の数を絞り、パートナーとして信頼できるNGOを選定して着実に取り組んでいくことと見受けられる。また、イラク情勢の見通しは依然、混迷の様を呈しており、イラク難民の帰還には目処が見当たらない状況にある。以上から、シリアにおけるイラク難民支援事業の実施にあたっては、中長期の対応を見据えた計画作りが必要とされる。シリアにおける地域コミュニティの生活能力を向上させることにより、イラク難民保護の対応能力を高めるという観点からは、「第10次社会経済開発5ヵ年計画」との協調が重要となり、当面の対応計画の策定において、この観点を基点とすれば、2010年末を目処に開発計画との整合性をとることにより、中期的な対応計画を立案することが可能と考えられる。JPF資金からNGO支援無償他のファンドとの組み合わせを考慮の上、中期計画の策定をもって初期計画の実効性を図ることが妥当と考えられる。
(3)議事・訪問記録
(イ) 8月14日
  【10:30 在シリア日本国大使館訪問】

出席者:
先方 岩間一等書記官、森下三等書記官
当方

上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局職員

場所: 在シリア日本国大使館
概要:  イラク難民の概況およびUNHCRやUNICEFの動向について説明があった。シリアにいるイラク難民の正確な数は不明であるが、現在150万人以上いると推定されているとのことであった。また、イラク難民の流入、滞在により医療サービス、電力、水資源、雇用、教育などのサービスが圧迫されており、シリア人とイラク難民との間で軋轢が生じ始めているとのことであった。
 シリア政府のイラク難民支援の方針として、教育・保健医療分野における既存のシステムを補強することにより、イラク難民とシリア人双方が裨益する支援形態を採っており、日本のNGOが活動する場合は政府の枠組みに則って支援するのが良い、また、NGOの調整を一手に引き受ける赤新月社との信頼関係の醸成も不可欠であり、今般の調査も赤新月社のアドバイスを尊重しつつ行ったほうが良いとのアドバイスをいただいた。シリアにおける日本のNGOの活動が可能となるよう、大使館の方から協力を得つつ調査を進めていくことを確認した※3
   
※3 実際、日本国大使館やJICAのシリア政府関係者との長年にわたり培われた良好な関係により、大臣や副大臣との面談も容易に可能となった他、NGOという概念が存在しなかった同国において、大使館が口上書を以ってJENとJPFを紹介してくれたことにより、「日本政府が信頼している団体」との認識がシリア政府や赤新月社関係者の間で共有されていたことは、本調査を円滑に進める上で非常に役立った。

【13:00 シリア外務省訪問】

出席者:
先方 ミラード・アティーエ国際機関局長、
オンフアーン・ナイーブ国際機関局次長ほか2名
当方

上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局員(岩間書記官、森下書記官、通訳同席)

場所: シリア外務省
概要: シリアにいるイラク難民の概況を説明すると共に、シリアでも今般イラク難民に関し、7月29〜30日に「イラク周辺国イラク難民保健問題閣僚会級会合」を、8月8〜9日には「イラク周辺国会議治安ワーキング・グループ会合」を開催した旨報告した。先方は、シリア政府が現在イラク難民支援に必要であると感じている人道ニーズ(添付(ハ))に関する報告書を提示し、国際社会からの支援を要請している旨述べ、日本のNGOの活動に対する期待感を表明し協力していくことを約束した。

【14:30 UNICEFシリア事務所訪問】

出席者:
先方 M. Anis Salem代表
当方 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局員
場所: UNICEF事務所
概要: UNICEFのイラク難民支援活動について詳細な説明があった。また支援体制として、UNICEFはイラク難民問題への対応は遅れており、UNHCRが国連でリードをとっている、8月中旬にはイラク難民対応ユニットを立ち上げ、事務所機能の増強を行う旨述べた。懸念としては、7月にはUNHCRと周辺国にいるイラク難民支援のために教育に関する合同アピールを行ったが、国際社会はシリア政府を支援することに消極的であり資金が集まっていないことをあげた。今までUNICEFと協力してきた国際NGOと協力して資金調達を行っていきたいとし、JPF参加NGOの支援が具体的に話が進んだ場合は事前に協議し連携の可能性を模索することで合意した。

【16:00 JICAダマスカス事務所訪問】

出席者:
先方 富田明子所長、玉林洋介次長
当方

上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局員

場所: JICA事務所
概要: JICAとしてもイラク難民の問題は深刻であると考えており、現在いかにイラク難民を支援可能か検討中であると説明があった。本分野における日本のNGOとの連携の可能性を示唆したが、現状のJICAの各種スキームとの連携、また、中長期的支援の必要性が認められるので、NGO支援無償やコミュニティ開発無償の活用も視野に入れて、今後連絡調整を行っていくことを確認した。
(ロ) 8月15日
  【12:00 赤新月社担当国務大臣訪問】

出席者:
先方 Dr. Bashar al Sha'ar大臣ほか1名
当方 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局員(岩間書記官、森下書記官、通訳同席)
場所: 大統領府
概要: シリアにいるイラク難民が直面する問題について概要説明があった。シリア政府としては、資金提供を期待しているのではなく、日本とシリアで協力し何かを作り上げていくことをしたい旨強調した。今後イラク難民支援に関し、他の国のNGOのモデルとなるよう日本のNGOの支援活動に期待感を表明すると共に、活動実施プロセスにおいて協力していくことを約束した。

【14:30 UNHCRシリア事務所訪問】

出席者:
先方 Dietrun Gunther(Ms.)上級プロテクション・オフィサー他
プログラム・オフィサー1名
当方

上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局員

場所: UNHCR事務所
概要: UNHCRのシリアにいるイラク難民の教育および保健医療分野における支援活動、難民登録や登録難民支援の能力強化の必要性について説明を受けた。NGOとの連携状況については、現在12の団体とIP契約を結んでいる、国際NGOとのIP契約は未締結であるが、8の国際NGOがショートリストにあがっており来週にでも赤新月社とMOUを結ぶことになろうと述べた。UNHCRとしては、さらに多くのNGOと医療を中心とする様々な分野でIP契約を締結したいとした。JPF参加NGOがシリアで活動するのであれば、赤新月社に事業申請を提出する前に事前協議を行うことで合意した。

【16:00 Premiere Urgence職員との意見交換】

出席者:
先方 Serge Grwel職員
当方 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局員
場所: Fardos Hotel
概要: ガーウェル職員が属する団体の赤新月社への申請作業について説明した。20日にMOUを締結できる見込みのある団体を集めた調整会合が開催され、同団体も呼ばれていることから来週にでもMOUを締結できる見込みと述べたが、MOUまでのプロセスは遅々として進まず5ヶ月要した旨述べた。他方、シリアにとって今回のプロセスは初めてのことであり、数団体がMOUを結べばメカニズムが確立されてくるため後進のNGOのプロセスは早急に進む可能性があることを示唆した。更に、MOUを締結するまでに、UNHCRと協議し事業申請を作成したこと、赤新月社の事務局長と密なコミュニケーションを保つこと、小規模プロジェクトで始め、様子が分かってくるに従い拡大していくのが良いなどのアドバイスを提供してくれたと共に、今後も情報交換していくことで合意した。
(ハ) 8月16日
  【シリア赤新月社(SARC)総裁との協議】

出席者:
先方 Dr. Abdul Rahman Attar総裁、Marwan Abdallah事務局長
当方 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、
山内JPF事務局員(岩間書記官、森下書記官、通訳同席)
場所: 在シリア ポルトガル大使館
概要: SARCおよび水、医療ならびに教育支援活動について説明すると共に、真剣な国際NGOと協力したい旨述べ日本のNGOの支援活動に対する高い期待感を表明した。現在シリア外務省にJENとJPFの団体登録のための書簡を作成しており、総裁がフォローする旨述べると共に、SARCと協力するにあたり合同アカウントの設置の必要性、他のプログラムとの補完性の確保および重複の回避、事務所設置ならびに車両所有に関する支援など心得るべき点を説明した。総裁は、シリアでの活動を本気で検討しているのであれば早急な行動が必要とし、外務省への団体登録申請と同時に事業のプロポーザルも同時に作成していくよう慫慂し、可能な限り協力していきたいと述べた。また、SARCと協力可能な分野として特に、子供のための病院建設、病院修復、看護学校の設置について言及した。
(ニ) 8月17日
  【9:00 現地調査】

出席者: 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、山内JPF事務局員
(赤新月社が調整した調査であった。赤新月社の要望により森下書記官も同行した。)
概要:
ザヘラの病院建設現場を視察:赤新月社が支援して欲しい病院の一つ。地上9階建て、地下2階建ての子供を対象にした病院で、まだ建設中ではあるが、完成間近の1階のみを使用して来月には診察を始める予定。機材はすべてそろう予定であり、今後の建設継続のために資金を要している由。
 
 
   
サイード・ゼイナブ町のポリクリニック・センター視察(Dr. Soman-Kassenが案内。参考資料手交:添付(ニ))
 

UNHCRとのプロジェクトで建設したセンター。シリア人に加えアフガニスタン、ソマリア、スーダン、イラク難民などすべてを対象にしたポリクリニック。一日40人の患者を1人の医者が診察するのが平均であり、患者の90%がイラク難民。医者の大半がシリア人だが、2名のイラク人の医者(癌やnuclear treatmentの専門家)もいる。難民登録※4をしたイラク難民は診察料の20%を負担するのみだが、登録証を持たないイラク難民は全額負担するシステム。最も多い病気は、風や下痢などであるが、それに加えストレスなどによる心臓病、イラクで使用された化学爆弾(Chemical weapon)により、癌を患う人が多い。手術を伴うオペレーションは高価であり、ポリクリニックでは対応できず病院で行われるが、UNHCR・SARCがコストを全額負担することもある。このセンターに通院する患者は、イラクですべてを使い果たし、シリアでも職がないため生活が困窮していると懸念を表明した。

 
※4 難民登録は、ダマスカスおよびデューマにあるUNHCRの難民登録センターで行うが、難民の数に比べ難民登録センターの数が2つしかないことに加え、申請して6ヶ月後にインタビューがあり取得可能となることから時間がかかるプロセスである。これに対し、クリニック側は登録取得後すぐにアポを取れるよう登録証がなくてもアポイントを取れるシステムを採用している。
   
ジャラマナ市のクリニック視察(Amer Al Ali医療部マネージャーが案内。)
  開設して3ヶ月になる。対象者および費用負担のシステムは、サイード・ゼイナブのポリクリニックと同様。1日100から150人の人が訪れ、12人の医者と5人の看護婦(そのうち2名がイラク人)で交代して対応している。患者はクリニックから20キロメートル以内のところからくるため、徒歩やバスで来るものがほとんど。イラクでの化学爆弾の使用により癌患者が多い。停電が頻繁にあるため電力モーターを必要としている旨説明があった。
   
メッゼのポリクリニック視察
  1986年に設立されて以来サービスの質を維持しつつ運営している。1日200から300の患者を18名の医者で診察している。大多数の患者はシリア人、10%程度がイラク難民。クリニックに来る理由は風邪や下痢などの日常よくある病気が大半。機材はほとんどそろっている。シリアには医者が多数いるため、今後イラク難民の増加に伴い新たに病院が建設されても医者不足になることはないとの見方が示された。
   
赤新月社新事務所でアブダッラ事務局長と意見交換
  現在34のNGOがウェイティング・リストにあり、12のNGOが承認を得る予定と説明し、多くのNGOがダマスカスにいるイラク難民に焦点を当てているが、ダマスカスの物価高騰により地方に行くものも増えてきている旨述べ地方での支援の必要性を訴えた。
(ホ) 8月18日
  【10:00 保健省副大臣訪問】

出席者:
先方 Dr. Moh. Jamil Al-owayed副大臣、Dr. Hassan Alhaj Hussein国際関係局長
当方 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、山内JPF事務局員(森下書記官、通訳同席)
場所: 保健省
概要: イラク難民が抱える医療分野の問題を説明した。イラク難民にも医療サービスへのアクセスは提供しているが、150万人を超えるイラク難民のニーズを満たすことは能力を超えると考えており、サービスを提供していくことが困難になりつつある旨述べた。特に癌や心臓病の病院がイラク人で混雑している状況に言及した。JPF参加NGOが支援可能な分野として、医薬品の配布、診察機材、救急車の提供をあげ、日本のNGOの活動に対する期待感を表明した。また、医療関係のニーズとして8月3日にダマスカスで開催された「イラク周辺国イラク難民保健問題閣僚級会合」でそれぞれの国におけるイラク難民の状況が提示された旨述べ、行動枠組みを書いた合意(案)が出来ているとしシリア外務省から入手可能と述べた。

【12:00 教育省副大臣訪問】

出席者:
先方 スレイマン・ファティーブ副大臣、Abdal Salam Salama統計局長
当方 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、山内JPF事務局員(森下書記官同席、通訳)
場所: 教育省
概要: 教育分野に関するイラク難民の子供の状況を説明した。特に支援して欲しいものとして、イラク難民の子供の増加による、教科書増刷のための印刷機材の提供と学校建設をあげた。教育分野で協力可能なことがあれば支援する旨述べ、日本のNGOの活動に対する期待感を表明した。

【14:00 UNDPシリア事務所訪問】

出席者:
先方 Fumiko Fukuoka次長
当方 上杉JENアンマン事務所職員、高松JPF事務局長、山内JPF事務局員
場所: UNDP事務所
概要: 次長より第10次5カ年計画のCDRを手交越すと共に、UNDPのイラク難民支援について説明した。イラク難民がシリアの総人口の10%も増加させていること、帰還の目処が立っていないこと、キャンプではなく賃貸アパートに滞在していること、そしてシリア政府の受け入れ態勢強化が必要であることなどから、緊急援助だけでは対応できず開発の視点も重要であり、UNDPも活動に乗り出している旨述べた。既に、環境分野支援をUNHCRとニーズ・アセスメントを世銀と実施することが決定している旨述べ、今後ニーズ・アセスメントで進展があれば情報を共有していく旨述べると共に、JPFからは実際に支援を行うNGOが出ればその情報を共有し、連携の可能性を探っていくことで合意した。
(ヘ) 8月19日
  【在シリア日本国大使館報告】

出席者:
先方 森下書記官
当方 高松JPF事務局長 山内JPF事務局員
場所: 在シリア日本国大使館
概要: 当方より、今般の調査報告のドラフトを手交し成果を説明した。先方より、大使館としても日本のNGOとの関わり方について模索しているところであり、今回のような協力を次回ご訪問いただいたときにできるかはわからないが、シリアにおけるイラク難民問題は深刻であり、またNGOという概念がまったく無かった国でもあり、できる限り協力したいと思っている旨述べた。
以上


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