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国際援助コミュニティに対する支援要請 |
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イラク難民の存在とその流入が加速化していることによる政治・経済・社会的負担の重さについて、イラク政府当局がその深刻さを認識し、国際援助コミュニティとの協調を具体的に模索し始めたのは昨年末あたりからの趣であり、以来、国連人道三機関(UNHCR、UNICEF、WFP)を中心とする対応計画の策定が進められている。8月15日現在、シリア外務省によれば、イラク難民総数はシリア国民総数(1,836万人:2006年シリア統計局推定)の約10%に相当する約150万人と見積もられ、その総数は1日あたり約2,000人の割合で増加している趣。バッシャール大統領の公式表明により、シリア政府はアラブの同胞としてイラク難民を受け入れるとする立場を堅持しているが、第10次社会経済開発5ヵ年計画(2006−2010)により社会開発の基盤整備を進めている途上にあって、現状の推移は、同国が耐え得る臨界点に達しつつある状況を迎えていると言える。かかる状況に鑑み、シリア政府は4月17−18日ジュネーブで開催された「イラク難民及び国内避難民の支援に関する国際会合」、7月26日にアンマンで開催された「イラク難民ホスト国会合」、7月29-30日ダマスカスで開催された「イラク周辺国イラク難民保健問題閣僚級会合」等において、対応方針及び重点支援セクターを発表し、国際援助コミュニティに対する支援を要請している。
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| (ロ) |
シリア政府の対応方針 |
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シリア政府はイラク人難民に対し寛容な政策をとっている。アラブ人であれば入国のための査証を要求していないほか、シリアに入国する難民(イラクに加え、ソマリア、スーダン南部、レバノン、アフガニスタンなどからも難民を受け入れている)はシリア人と平等のサービスを享受できる※1。
先述の4月にジュネーブで開催された国際会議において120万人(当時)を対象にしたイラク難民の人道ニーズを提示している(添付(ハ))。そこでは、イラク難民のシリア国内における増加は、シリア人の生活のいたるところに多大な影響を与えているとし、不動産、食料、生活必需品の値段が高騰しており、政府により補助を受けている燃料やパンといったものも被害を受けているとした上で、経済ニーズ(発電機、公衆衛生施設、ごみのリサイクル施設など)、保健医療ニーズ(病院建設、がん治療薬、救急車など)、教育ニーズ(学校建設、学校用品など)、社会的ニーズ(母子家庭への資金提供、ケアセンターの設置、社会サービスセンター支援など)、治安ニーズ(地方警察本署の設置、難民対応官の訓練、警察の増加など)と、5つの分野の具体的ニーズを挙げ、国際社会からの理解と支援を要請している※2。
当初は、本国に帰ることを前提としているイラク難民の就業を許可していなかったシリア政府であるが、ジュネーブで出された人道ニーズには、雇用機会の提供もニーズの一つとされ、外務省側よりも雇用の提供を重視している旨発言があった。これは、イラク難民が所持していた資金が枯渇し始め、生活が困窮してきたことを政府側も深刻に受け止めていることを示している。
イラク難民の問題に対し政府として包括的に取組む体制はまだとられていないようである。保健省は、イラク難民委員会があり関係諸団体から構成された委員会の調整を行っている由であるが、各省庁を横断したイラク難民に対応するための運営委員会はまだ存在していないとのことであり、また、政府と援助コミュニティの連絡調整会合も存在しないのが現状である。
| ※1 |
このような政府の方針に加え、生活費が他国と比較して安価であることから、大半のイラク人がシリアに向かう傾向にあり、シリア政府の大きな負担となりつつある。 |
| ※2 |
国際機関によれば、シリア政府に対する米国の制裁などにより国際社会からの支援はあまり集まっていない状況とのことであった。 |
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| (ハ) |
国際援助コミュニティへの対応 |
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先のイラク戦争時やレバノン紛争の際に人道的な見地から国際援助コミュニティの支援を受け入れ、難民の庇護を行ったケースはあるものの、今般の支援要請のごとく、シリア政府が主体となって広く国際援助コミュニティの支援を要請する試みは初めてのケースと言える。現行の開発援助の仕組みを踏襲しつつ新しい対応の仕組みを組み上げる必要があることから、政府としての全体方針の策定、実行計画、関係当局の権限・関連、受け入れの手続き等、国連機関との調整や国際NGOの受け入れにあたっての対応の整理に数ヶ月の時間を要している趣。国際NGOの事業展開にかかる窓口はシリア赤新月社が一括して対応する体制が敷かれており、その他、団体登録については外務省、開発援助との関わりが生じる活動については関係各省、事業地の選定については内務省の許可をシリア赤新月社と通して得ることが必要とされる。基本的には、通常の開発援助の仕組みが適用されており(超法規的な対応措置が講じられている様子はない)、シリア赤新月社が窓口としての機能を新たに付与されたことから、同社の機能強化が喫緊の課題として意識されている。活動許認可の手続きのため5ヶ月ほどを要してなお事業着手に至っていないケースがほとんどであり、いち早く対応を準備した国連・国際NGOの懸念となっている。しかしながら、8月20日、既に活動許可の申請が承認された国際NGO(12団体)を対象とするMOUの説明会が予定されており、8月中には事業許可が交付される見通しが共有されていることから、活動の実体化に向けた手続きの進展が見込める状況にある。
また、手続きに時間を要していることを除けば、シリア政府当局の対応は着実で透明性があり、治安も安定しており、物価が安く、第三者の干渉や賄賂を要求されることも少ないので、実施体制の確立において際立って困難な点はないという評価が概ねであった(国際NGO評)。 |
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| (ニ) |
移動の制限・基礎データの不足 |
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イラク難民の居留地や国境周辺地域において調査活動を行うことについては、実質的な制限が課せられており、案件形成上のネックとなっている。国連機関においても、最も困難な点の一つは移動の制限である由。多くの国際NGOが事業計画をもとに許可申請をしているが、事業地を選定できていないケースが概ねの趣。その場合、シリア赤新月社とのMOUを経た後に、事業地の選定を関係各省と調整するプロセスとなる。国際NGOの支援活動が実体化し、国連の支援活動も本格化することにより、移動の制限が実質的に緩和されていくことが見込まれる。
また、現段階では国連機関が認証できる包括的なアセスメントがなされていないものの、UNDPは世銀と協力した上で8月上旬にシリア外務省からニーズ・アセスメントを実施する許可を取得しており、(a)イラク難民増加によるシリアへの影響、(b)イラク難民の生活状況、(c)対応のギャップにかかる報告書を提出することになる由であり、この点についても、基礎データの充足については、漸次基礎データの精度が高められていくことが見込まれる。 |
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| (ホ) |
国際機関 |
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現時点において、対応の枢要を担う人道三機関の中で中心的な役割を果たしているのはUNHCRである。シリア政府とのパイプ役(ローレンス所長)を務め、今年12月末までの予算措置を了し、ここ2−3ヶ月で事務所スタッフの増強も了している。現在の国際スタッフ数は約20名、近々、事務所の移転が予定されている。シリア国内で既に12団体のパートナーを有し、また、8団体の国際NGOとのIPによる事業計画がシリア政府当局の許認可を待っている状態。IPが想定されているINGOは、CARE、SCUK、PREMIERE EMERGENCE、イスラミック・リリーフ他の由。
UNICEFは昨年11月、スーダン事務所からサーレム所長が着任し、以来、体制づくりが進められている。8月中旬には、5−6名の国際スタッフがイラク難民対応ユニットとして増強される予定であり、具体的な事業計画の立案が進められる見通し。今の時点で、予算措置は未了。INGOとの事業計画をもとに資金調達を働きかけが行われる見通し。
WFPはUNHCRと連携して困窮イラク難民を対象に食糧支援を行っている。5月13日には、シリアに滞在する3万人のイラク難民に対する食糧援助を行うためのアピールを発表した。
以上の現状より、当面はUNHCRとの連携を柱に、UNICEFの予算措置のタイミングを見計らいつつ、WFPも含めた複合的連携を目在して事業形成することが妥当と認められる。
また、シリア側の対応能力を強化するという観点から、UNDPを中心として進められている「第10次社会経済開発5ヵ年計画」やその中でJICAが担う技術協力事業とのシナジーを勘案することにより、更なる事業効果を得る可能性が認められる。 |
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| (ヘ) |
日本に対する期待 |
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日本および日本人に対する感情は良好であり、政府関係当局および赤新月社関係者の応対も極めて友好的なことは、事業展開に着手する上での大きな資産である。また、国際機関および国際NGOからも、日本の団体であるということが意味する優位性が広く認知されている。
シリア政府において今般のイラク難民支援は、幾多のリスクをともないながら多数の国際NGOを受け入れる一大事業であり、関係者の意識も極めて高いものが感じられた。日本からの支援に対する期待は極めて高く、今次ミッションにおいても閣僚級の方々にご対応いただいたことは、その証左の一つと言える。事業の実体化に際して、その期待は概ね、(1)重点分野の活動を担うこと、(2)共有される達成目標の実現に向け信頼に足るパートナーであること、(3)シリア側の対応能力の向上に資すること、(4)国際NGOとシリア政府が協力するモデルとなること、(5)日本のNGOとシリア政府が協力するモデルとなること、以上の5点から構成される。
一方で、高い期待は時として、過大な期待と過度な要求に繋がりかねないことから、実施NGOは自ら活動方針と計画を誤解なく伝え、関係各方面の理解を確認した上で、特に初期段階においては、慎重を期して事業展開にあたることが求められる。関係各方面により保有する期待の優先順位が異なり、その一つに重大な欠陥が生じた場合、全体としての事業展開に致命的な影響を与え得ることから、この点については十分に留意する必要が認められる。 |
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