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初動調査報告

JPF 9/12-9/20

JAR&WVJ 9/12-9/20

活動地図



南部アフリカ干ばつ被災者支援(スワジランド)・情報

スワジランド干ばつ被災者支援 初動調査報告書
2007年10月10日
特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)
特定非営利活動法人 難民支援協会(JAR)
1. 調査概要

 8月30日付常任委員会において、スワジランドにおける干ばつに対応すべく承認された標記調査事業につき、以下にその調査結果に基づき報告をする。調査チームはワールド・ビジョン・ジャパンから坂賢二郎と大木悠子の2名、難民支援協会から石井宏明が参加した※1

 昨年から今年にかけて、南部アフリカ諸国、特にジンバブエ、レソトそしてスワジランドにおいて農耕期に十分な雨量がみられず、大規模な干ばつとなった。この影響で、人口の多くを占める農村地帯の農民の生活を壊滅的なレベルまでに陥れるほどの食糧や水の不足をもたらした。被災者はそれぞれジンバブエで410万人(人口比31%)、レソト55万3千人(人口比30%)、スワジランドで41万人(人口比37%)の合計約500万人にも及んでおり、国際社会からの緊急の支援なしでは人々の生活が成り立たないところまで追い詰められている※2

 今回調査対象としたスワジランドでは、特にメイズの生育に最も必要な時期である9〜11月にかけてスワジランド全土に1992年以来の大規模干ばつが襲い、2007年のメイズ推定生産高※3は前年のマイナス61%の26,170トンという史上最低を記録することとなった※4。この結果、現在スワジランド全体で人口の約40%を占める407,000人もの人たちが深刻な食糧と水不足に直面し※5ている。今回の干ばつは、69%の人びとが貧困者層に属し、42.6%(2004年)もの人びとがHIVに感染しているスワジランドという、非常に脆弱な社会経済的な基盤の上に成り立つ国の存立自体をも危うくしている。

 上記を受けて、WVJ、JARでは、全国民に占める被災者数はじめ、貧困層やHIV/AIDSなどの社会的脆弱性の最も高いスワジランドに焦点を当てて支援を行うべく難民支援協会と共にJPFに出動の関心を表明、今回の初動調査行うに至った。その結果、下記に関する結果を得た。

スワジランドにおける大規模干ばつ被害とそれに対する支援状況
実際に必要とされる支援ニーズと支援可能な項目
直接的な干ばつ被害と社会的背景をアドレスした中長期的支援戦略・具体的計画

※1 今回ジャパン・プラットフォームからも長代表と山内麻里氏の2名も調査日程の一部を除き同行された。
※2 ワールド・ビジョン全体としては、ジンバブエで170万人、レソトとスワジランドでそれぞれ30万人をターゲットに緊急支援を展開している。
※3 地域など地理的条件にも拠るが、通常収穫は3月ごろとなっている。
※4 67,000MT(2006年)→26,000MT(2007年)。なお、10年前比ではメイズ生産量は約半分に低下している。
※5 UNOCHA 07年7月25日報告


2. 調査報告 2-1. 調査日程

2007年 WVJ 坂 賢二郎・大木 悠子、JAR 石井 宏明
9月12日(水) 成田発(香港経由)
9月13日(木) ヨハネスブルク着
日本大使館訪問
ヨハネスブルク発
マンジニ着
9月14日(金) ワールド・ビジョン・スワジランド事務所訪問
国連児童基金(UNICEF)事務所訪問
Ministry of Economic Planning and Development訪問
Ministry of Regional Development and Youth Affairs訪問
Ministry of Agriculture and Co-operatives訪問
9月15日(土) フィールド調査:ルボンボ地域ロマハシャ
地元リーダーからの聞き取り調査
脆弱者(女性を世帯主とする家庭)からの聞き取り調査
脆弱者(子どもを世帯主とする家庭)からの聞き取り調査1
若者グループからの聞き取り調査
脆弱者(子どもを世帯主とする家庭)からの聞き取り調査2
9月16日(日) WVJ、JAR、JPF事務局との情報整理、打ち合わせ
9月17日(月) フィールド調査:ルボンボ地域ロマハシャ
Ekuthuleni地区NCP※6での聞き取り調査
児童保護員からの聞き取り調査
Majiembeni地区NCPでの聞き取り
脆弱者(慢性病を患う病人のいる家庭)への聞き取り調査
VCTセンターでの聞き取り調査
診療所での聞き取り調査
9月18日(火) マンザニ発
フィールド調査:ルボンボ地域ロマハシャ
農民グループからの聞き取り調査
近隣のWVによる地域開発事業地(ロマハシャ総合地域開発事業)訪問
ムババネ戻り
9月19日(水) ワールド・ビジョン・スワジランド事務所にて打ち合わせ
9月20日(木) 世界食糧計画(WFP)事務所訪問
国連児童基金(UNICEF)事務所訪問
国連食糧農業機関(FAO)事務所訪問
ワールド・ビジョン・スワジランド事務所にて打ち合わせ
9月21日(金) マンジニ発


※6 NCPとはNeighboring Care Pointの略で、OVC(Orphaned and Vulnerable Children)に対するプロテクションや、食事、教育、心のケアなど基本的なサービスを提供している施設。

なお、今回の調査は以下の構成で行われた。

1. 政府、国連関係者、現地カウンターパート(ワールド・ビジョン・スワジランド事務所、以下WVS)からの情報収集および協議(9月13日〜21日、添付参照)
2. 今回調査対象地となったコミュニティーの住民やその地域の関係者・団体からの聞き取り調査(9月15日〜18日、下記参照)



2-2. 現地調査

  • 調査対象地の選定

     調査対象地はルボンボ地方(Lubombo Region)、ロマハシャ区(Lomahasha Constituency)、シェウラ地域(Shewula Community)とした。

    スワジランドは、ホホ(Hhoho)、マンジニ(Manzini)、シセルウェニ(Shiselweni)、ルボンボ(Lubombo)の4つの地方で成り立っている。農業生態学的には高地のHighveld、Middleveld、LowveldおよびLubombo Plateauの同じく4区分から成り立っている。一般的にはLowveld、Lubombo Plateauに属するシセルウェニおよびルボンボの両地方は雨量も少なく※7、常に干ばつの危険にさらされている地域である。他方、ホホ、マンジニ両地方がHighveld、Middleveldに属し、雨量も比較的多く※8森林資源や農耕に適しており、通常農業生産高が干ばつに大きく左右されることは少ない。

     ただし、今年の干ばつは例外で、4つ全ての地方を巻き込む大規模な干ばつとなってしまっていることに注意する必要がある。例えばLubombo plateauでは、2004年から2006年までの過去3年間の平均に比べ68%、また通常であれば干ばつの被害を受けることのないHighveldでも56%の降雨量しかなかった。さらに、特に干ばつの影響を強く受けているLowveldに至っては主食であるメイズの生育に必要な水量に比べ249mmも降雨量が不足し、結果その収穫は壊滅的な打撃を受けてしまった。

     このように、今回の干ばつでは上記の通りスワジランドの4地方全てが被害を蒙っている。この結果、メイズ生産は国全体で前年比40%の26,170トン、過去5年間の平均生産量の35%しか収穫できなかった。これは今年の干ばつが例年と比べその規模と深刻さの証左だといえる。  このような条件の中で調査対象地としてルボンボ地方、シェウラ地域を選定した理由は、(1)調査対象地区の脆弱性、(2)現地における支援をとりまく状況と今後の展望、の2点が挙げられる。

     (1)の理由として、ルボンボ地方は干ばつの影響を最も受けやすいLubombo plateauと Lowveldを擁しており、その中のシェウラ地域は少し山がちな地形で比較的Lubombo plateauの特徴の強い土地柄である。ルボンボ地方全体の人口は他地方と比べそれほど変わらないにも関わらず、主食のメイズ耕作地は山がちな地形なこともありそれほど多くなく※9、またその結果食糧生産能力も他の地方と比べ低い※10。この結果、慢性的に食糧の確保が不安定な人の割合が30%と他の地方に比べて(18%〜21%)非常に高い。つまり、ルボンボ地方は慢性的な食糧不足に陥る可能性が高く、スワジランドでも干ばつの影響を最も受ける地方であるといってよい。

     上記に加え、(2)の理由として、ルボンボ地方のロマハシャ区はモザンビークと国境を接しており、地理的にも最も辺境に位置しており、そのためこれまで十分な地域開発が進んでいない。その中でもシェウラ地域はWFPやUNICEFを始めとした国連機関、またいくつかのNGOも小規模に活動を行っているが、これまで本格的な地域開発が行われたことはなく、支援から比較的取り残されてきたといえる。すでにカウンターパートであるワールド・ビジョン・スワジランドは、スワジランド全国で17の総合的地域開発事業を通じて地域の開発を進めているが、ロマハシャ区ではこれまで支援が行われてこなかった。しかし、2008年10月からワールド・ビジョン・ジャパンの支援(自己資金)で総合的地域開発事業を始めることが決定されていることから、JPF後の支援とのシナジー効果が望めるという観点からもこの地域を選定した。

    ※7 2004年から2006年までの年間平均降水量はLowveldで537mm、Lubombo Plateauで605mm
    ※8 2004年から2006年までの年間平均降水量はHighveldで858mm、Middleveldで722mm
    ※9 人口は約237,000人で全人口の20%を占めているが、Lubombo plateauに関して言えばメイズの耕作地は全国のうち5.8%を占めるに過ぎない(他の地方では人口21%〜30%に対してメイズの耕作面積は全国の28%〜35%を占める)。
    ※10 2002年〜2006年までの5年平均値で全国に占めるメイズ生産高は4.9%に過ぎない。


  • 調査期間および活動内容

    2007年9月15日〜18日、計3日間(「2-1.調査日程」の通り)


  • 調査手法と調査対象者

     調査はKey informant interviews(group/personal interviews)手法によって行った。これにより、干ばつによる被害について詳しく探り、ニーズを明確化した。 また、地域住民以外の関係者(現地NGOなどの地域関係者)などとのミーティングの場を設け、支援の現状と今後必要な支援などについて話しあった。調査の対象者は以下の通り(カッコ内の数字は調査対象人数)。

    地元リーダー (16), NCPスタッフ (3), コミュニティー保健衛生員(3), 児童保護員 (約10名), 若者グループ (40), NCPでの活動に参加する子どもたち (4), 農民グループ (8), 脆弱者グループ (子どもを世帯主とする家庭(2), 女性を世帯主とする家庭(1), 慢性病を患う病人のいる家庭 (1)), 診療所の看護婦、(1),VCTスタッフ(1) 同地で活動するNGOスタッフ (1), シェウラ地区書記 (1)


  • 調査内容

    2007年9月15日
    (1) コミュニティ・リーダー
       調査対象となったシェウラ地域は、王によって任命されるチーフと呼ばれるリーダーの下、14の各地区(サブ・センター)によって構成されている。各地区には各1名のリーダーがおり、各地区ごとの問題を取り扱っている。また毎週土曜には各地区のリーダーおよび地域住民の何人かが集まり、地域の問題を話し合うことになっている。今回のセッションには、全地区から合計14名のチーフが参加した。
     
    表1: 地区名
    Cocantfombi Mangwenya Mnyamatsini Tincumatsini
    Hhwahhwalala Maphakane Nduma Tingeni
    Jamehlungwini Matjemadze Ndzevane East  
    Kuthuleni Mlangeni Ndzevane West  


    食糧の現状
       チーフによると、人びとはWFPから配布される食糧(メイズ、豆、食用油など)に頼り生活しているが、配布量が十分でない。このような苦しい状況下においては、本来チーフが人びとを助けることができないことを不満に感じている。また、彼らによれば、この地区で一般的に摂取される食糧の種類は以下の表の通りである。
     
    表2: 一般的に摂取されている食糧
    種類 比率
    メイズ 60%
    さつまいも 10%
    キャッサバ 10%
    ピーナッツ 10%
    ソルガム 10%

    <出所>  チーフとのインタビュー 2007年9月15日


    水資源
       チーフらによると、最も一般的な水源は、わき水であるが、干ばつにより多くが渇水の傾向にある。彼らによると平均的な1家族あたり(6〜8人)1日に約100リットルの水が必要である。現在コミュニティー全体には7の井戸と、6の泉があるが、干上がってきているものもある。そのため家畜が死んでしまったり、作物ができなかったりする。作物ができない理由として、灌漑システムがないため、天水農業を行っていることに起因している。
     
    表3: 井戸数
    サブ・センター名 井戸数
    Nduma 1
    Matjemadze 1
    Kuthuleni 2
    Ndzevane East 2
    Ndzevane West 1
    Total 7

    <出所>  チーフとのインタビュー 2007年9月15日


    孤児及び脆弱な立場にいる子ども達について (OVCs)
       コミュニティーには、親を失い孤児になった子どもがたくさんいる。リーダーたちに拠れば、全体の約1,000世帯中25世帯が、子どもが世帯主の家庭である※11。本来の伝統的なサポートシステムによるとこのような子ども達は親戚などによって保護されるはずであるが、干ばつのため多くの家庭が苦しい状況に置かれているため、孤児の保護が困難になっている。このような子ども達を守るため、Neighborhood Care Point(NCP)といわれる児童館のようなものが、コミュニティーに4ヵ所ある。これらのNCPでは、WFPにより配布された食糧で給食が出る。
     
    ※11 OVCは合計約915人いる。


    教育
       リーダーらによると学校の数が不足している。コミュニティー全体で現在小学校が3校あるが、多くの子ども達は長い距離を歩いて学校に行かなくてはならない。また、中等教育に関しては校舎が1校しかないためアクセスはさらに悪いのが現状である。


    保健・医療
       コミュニティーには現在国営のクリニックが1つもない。一番近い国営の病院はモザンビークとの国境にほど近いロマハシャにあるが、かなりの距離があるため人びとが行くことは殆どない。コミュニティーに唯一あるクリニックはナザレ教会により運営されているクリニックだが、医療費を払うことが難しいためあまり行くことがないようである。


    リーダーたちの考えるコミュニティーのニーズ
       まず最も深刻な水不足の問題を改善するためのダム、貯水池の建設が挙げられた。色々なアイディアはあるのだが、資金不足のため実施できないのが現状である。リーダーたちの視点から見てコミュニティーに必要な支援を優先順位3つまで挙げてもらったところ、 まず一番目に食糧、次に水、そして三番目として耕作のための種ということであった。


    (2) 女性を世帯主とする家庭(Female-Headed Household)
       マビラ(37)は、上は16歳、下は1歳4ヶ月までの5人の子どもを抱えるシングル・マザーである。彼女の夫は2001年に病死した。彼は長い間ひどい頭痛に悩まされいたそうであるが、実際の死因は不明である。彼女は政府により補助を受けているが、実際にいくら位もらっているのかは教えてもらえなかった。水へのアクセスに関しては、家から徒歩5分〜10分程度のところに井戸があり、それを利用している。
     彼女の家族は1日に平均1食しか食べていない。収入源は集めた薪を売って得たお金である。1束約10ランド(日本円で約170円)で売れ、1週間に約2束売っているため、月の平均収入は約80ランド(日本円で約1,370円)である。
     彼女は、畑を所有しているが、おととし、去年と干ばつによりメイズが全滅してしまったため、去年から何も栽培していない。現在は、2ヶ月に1度の食糧配布に頼っている。この配布で20リットルの米、2リットルの豆、750mlの食用油3本を支給されている。
     彼女はニワトリも飼っていたが、病気※12により死んでしまった。
     
    ※12 ニューカッスル病。鳥類のウイルス性感染症で、ニワトリをはじめ多くの家禽や野生鳥類に感染する。多くの国に在来する病気で、伝染性が高く、ワクチンを摂取していない鳥の死亡率はほぼ100%となっている。
    Downloaded from the WWW on Oct 2, 2007 http://www.avianbiotech.com/Diseases/Newcastle.htm


    (3) 子どもを世帯主とする家庭(Child-headed household)1
       ノンドゥゾ(11)は2002年に母親を、2005年にはヨハネスブルグの鉱山で働いていた父親を病気で失い孤児となった。彼女には19歳の姉がいるが、現在街にある店で住み込みで働いているため月に1度しか帰ってこない。ノンドゥゾは現在、隣に住んでいる母親の叔父の家で、叔父の妻、兄と息子と暮らしている。家事の手伝いをする傍ら学校にも通い生活は良い。
     彼女の両親は畑を所有しており、現在一緒に住んでいる母親の叔父が畑で作物を作っていたがさとうきび畑で仕事を始めたため現在は畑は使っていない。
     現在通っている学校では食事が出て、毎日3食食べることが出来ているが、十分な食事ではないと言う。


    (4) 青少年グループ
       計32人の8歳以上の青少年がインタビューのために集った。
     
    表4: 参加者の年齢構成
    年齢 人数
    8歳〜 10
    12歳〜 6
    15歳〜 5
    18歳〜 12
    合計 33


    HIV/エイズ
       参加者の知っている同じ年代の子どもの多くが片親、もしくは両親をエイズで失ったという。約1/3の参加者がHIV/エイズについての知識を持っており、どのようにHIVに感染するかについても知っていた。主に学校、街やVCTで情報や知識を得ている。


    干ばつの影響
       干ばつの影響により、参加者の同級生の多くが学費を払えなくなり学校を辞めざるを得なかったという。中には生活の苦しさから、お金を得るために売春に手を出す子もいるらしい。食糧不足に直面している家族を助けるために農業をしたいが雨が降らず水が不足しているためそれもできないという。


    青少年から見たコミュニティーのニーズ
       もし外部からの支援を受けられるとしたら水、農業用のトラクター、水を引くためのパイプ、作物を売るための市場へのアクセスなどが必要である。


    仕事・雇用の機会
       今回のセッションには、コミュニティーの男性にランダムに集めてもらったが、その中に女の子は7人しかいなかった。話によると、女の子は家事の手伝いに従事しているため、来ることが難しいとのことだった。
     雇用のことについて質問すると、18歳以上の参加者の中には働いている人がいなかった。その理由として、雇用の機会があまりないとのことだった。学校にも行かず仕事もないため多くの参加者が「退屈している」と答えた。


    (5) 子どもを世帯主とする家庭(Child-headed household)2
       世帯主は20歳の長男で、彼を筆頭に6人の兄弟がいる※13。2000年11月に母親が出産中に死に赤ちゃんも間もなく死亡した。2001年にはヨハネスブルグの鉱山で働いていた父親も死亡、それ以来長男が兄弟の世話をし、親戚からの支援は受けていない。
     彼らにとって最も困難なことは食糧を得ることである。2005年、2006年と2年続けて干ばつによりメイズが収穫できず、新たに種植えしたくても種もない状態である。
     家畜はやぎを所有していたが現金を得るために殆ど売ってしまったため現在は3頭のみ残っている。これらのやぎは祖母が世話をしている。彼らは食糧配布に頼って生活をしており、2ヶ月に1度20kgのメイズ2袋に加え米や食用油を受け取っている。しかしこれでは家族全員食べていくのに十分ではないため、1日平均1食のみ食べて生活している。家族を支えるために長男と次男の二人は日雇いで不定期に仕事をしている。これにより毎月平均80ランド(日本円で約1,370円)ほどの収入を得ている。14歳の四女と15歳の双子の一人の計二人以外は学費が払えないため退学せざるを得なかった。学費と教科書代だけで4年生で一人あたり年間600ランドを払わなくてはいけないため、彼らには到底払うことができず、結局教育を放棄することしか選択肢として残されていない。もし外部からの支援を得られるのであれば、耕作のための種と学校に通う機会が欲しい、ということであった。
     
    ※13 家族構成: 長男(20歳)、次男(18歳)、 長女(16歳)、 次女・三女(15歳双子)、四女(14歳)、三男(12歳)


    (6) コミュニティー保健衛生員(Home-Based Caregivers、以下HBC)
       コミュニティー保健衛生員とのインタビューのためにEkuthuleni地区にあるKamswati NCPを訪問した。計5人のHBCがインタビューに参加した。HBCはコミュニティーの住民の女性で、プライマリーヘルスケアについてのトレーニングを受け、住民に各家庭を訪問し、保健サービスを提供する、リーダーによって選抜されたボランティアである。彼らは1980年代に以下の分野において3ヶ月の集中トレーニングを受けた※14:
    1. プライマリーヘルスケア
    2. 衛生(廃棄物処理)
    3. トイレ建設
    4. 栄養(バランスの取れた食事の摂り方)
    5. 救急手当て
     参加者によるとトレーニングにはギャップがあると感じている。理由として疾病に関する知識が限られているため、住民を訪問した際に症状を見てどの病気が原因か特定することが困難な状況が多くあることが挙げられた。
     各HBCは約40世帯を担当しており、週3日に家庭訪問を行うことになっているが、毎日のように訪問しなくてはいけないのが現状である。
     毎月石鹸などの必需品を購入する雑費として100ランドが政府から支給されるが十分ではない。薬なども不足しているため、訪問時に薬を配布したくてもできないことが多い。
     
    ※14 Later talking to the nurse at the local clinic, it became evident that they are actually Rural Health Motivators who are Health Volunteers appointed by the community.  Home-Based Caregivers go through additional training and are promoted to Rural Health Motivator.


    干ばつの影響
       干ばつによる食糧不足のため、健康への影響が見受けられているという。子どもに関しては、低体重の子どもが増加したり、大人に関しては病気から回復する時間が長くかかっている。
     健康面以外では、子どもの犯罪率が上昇している。食糧を得るために他人の家に侵入し食糧を盗んだり、食糧を得るために性的搾取の被害に遭う女の子もいる。ただし、特に子どもに対する虐待のケースについては以前より減ったと感じている。この要因の一つとして挙げられたのが児童保護員(Child Protector)の存在である※15
     
    ※15 詳細については後述のChild Protectorとのインタビューを参照


    問題点
       HBCによってコミュニティーが抱える3つの最大の問題点が挙げられた:
    1. 食糧不足 (病人が空腹時に薬を服用しなくてはいけない);
    2. 子ども達だけで留守番する時間が長くなったため、虐待を受けるリスクが高くなる;
    3. 学費を払うお金がない。政府がOVCの奨学金を払うことになっているが、この額は必要額の80%しかカバーしていない※16。学費が小学校でも年間400〜600ランド かかり、高校では年間1000ランド掛かる。
     
    ※16 教育省は学費を払うことが困難な状況にあるOVCに対して奨学金を支給することになっているが実際は多くの問題があるため支給が遅れており、支給されない子どももいる。そのため退学を余儀なくされる子も増えている。


    (7) NCPスタッフ(NCP Caregivers)1
       訪問したNCPは2003年にユニセフによって建設され、現在WFPからの食糧配給を受けている。NCPスタッフはボランティアで、このNCPは平日の8:30-15:00まで運営している。NCPで行われる主な活動は、スポーツ、学習、遊び、食事などである。現在系58人の子どもが登録している。以前は79人いたが対象年齢が0歳から7歳のため7歳以上になった子どもはNCPを辞めたという。来年には3人が辞め、ノン・フォーマル学校に通うことになる。子ども達は長くて1km〜2kmの距離を歩いてNCPに通っている。中にはNCPで食べる食事が唯一の食事の子もいる。WFPは毎月NCPに対して食糧配布を行っている。このNCPは毎月26kgのメイズを6袋、50kgの豆、2.5kgの食用油の支給を受けている。しかしNCPスタッフによるとこれは十分ではなく、この倍の食糧は必要であるという。水資源は政府によって付近に建てられた井戸で、十分な水量はある。FAOによって2つの水タンクが支給された(1つは2005年、2つ目は今年8月)。しかし給水はされていないため現在はいずれも空である。


    (8) 児童保護員(Child Protectors (Ndzevane West))
       児童保護員(Child Protector、以下CP)制度は、政府、ユニセフ、カリタスによって始まった事業である。CPの仕事は、コミュニティーの子ども達があらゆる脅威から守られるようにすることである。彼らはHIV/AIDS、虐待、虐待を受けた子供たちへの心のケアの仕方などをについてのトレーニングをユニセフやWorld University Services (NGO)受けている。 彼らはコミュニティーの住民によって推薦され、各サブ・エリアのリーダー等によって選抜されるCPはボランティアとして週2-3 日CPの仕事に従事する。各CPは約5世帯を受け持っている。シェウラには現在Ndzaweni Westと Jamehlungwini 地区にCPがいる。


    問題点
       食糧不足が深刻な問題となっている。子ども達の中には食糧を盗む子供※17や、学費が食糧代にまわされ学校を退学する者も出ている。また食糧を買いに市場に行く交通費も払えないような状況に直面している世帯も目立つ。ちなみに、食糧の値段が去年と比べ大幅に上昇している。以下の表は価格の比較である。
     
    表5: 食糧の価格比較(ランド)
    食糧 2006 2007
    メイズ (1 kgあたり) 30 60
    砂糖 (1 kgあたり) 9 15
    食用油(750mlあたり) 7 12

    <出典>児童保護員からの聞き取り調査による。

       子ども達は食糧、水、教育などの基本的なニーズが十分に満たされていない。また、毛布など、寒さから身を守るための必要なアイテムさえも不足している。多くの子供が学校を退学している大きな要因は、学費が払えなくなっていることである。マイクロ・プロジェクト、カリタス(小学生5人)、他のNGO(1999年〜2005年)が奨学金を支給しているがごく一部の子どものみしか裨益していない。
     子どもを世帯主とする家庭への対応も大きな問題の一つである。孤児になってしまった子どもがいた場合、CPはまず子どもに接し、世話をしてもらえる親戚を探す手伝いをする。
     さらに、CPはコミュニティーの警察と密に連絡を取り、脆弱な立場におかれ易い女の子の保護を行う。虐待のケースを発見した場合はまず子どもをクリニックに連れて行き、その後コミュニティーのinner councilに報告する。
     
    ※17 もし子どもが盗みなどをしてしまった場合は、まずはコミュニティー内で問題解決を試みるなどの対応を取っている。

    (9) NCPスタッフ(NCP Caregivers)2
       3人のNCPスタッフとインタビューが行われた。このNCPでは、計4人のNCPスタッフがボランティアしているが、訪問した日は1名がFAOのワークショップに参加していたため欠席だった。このNCPには現在87人の子どもが登録している。この内約67人の子ども達がNCPに来ている。訪問時には約18人の子どもが来ていた。このNCPは2003年に開いた。当時は食糧が支給されていなかったが、現在はセーブ・ザ・チルドレンを通じてWFPよりCSB,Wheat-Beansなどの支給を受けているため、NCPで子ども達に給食を出している。NCPではノン・フォーマル教育も提供されているため、そのために学校を来る子ども達もいる。このNCPには以前Parent Committeeが存在し、親もNCPの運営に参加していたが、去年から機能していない。
     NCPに来ることを希望する子どもは誰でもNCPに来ることができる。実際来ている子どもの中には孤児ではない子ども達もいる。現在と開設当時とで子どもの人数に差があるか聞いたところ、就学年齢の子どもは小学校に行くように勧めるが、学費が払えないことや、政府からの奨学金が支給されないことから、NCPに留まらざるを得ない子ども達も多い。現在そのような子どもたちのためにカリタスが16人の子ども達に奨学金を支給している。


    問題点
       CPによると、多くの子ども達が、石鹸などがないため、手を洗えないという。また、NCPには塩など、食事を作る際に必要な調味料などもないため、NCPスタッフ自らが自宅から持参しなくてはならない。多くの子ども達にとってはNCPで食べる食事が一日に食べられる唯一の食事である。そのためNCPに来る前に食事を摂らず来る子どももいるため、できる限り朝ごはんにPorridgeなども出すようにはしているが、WFPの食糧の配布量が減ったため、難しい。食糧配布量が削減されたことで、NCPスタッフに対する支給量も減ったため、やる気を失い辞めることも考えている。
     
    表6: NCPの支援状況
    団体名 アイテム名
    カリタス 家具
    ワールド・ビジョン プラスチック製マット
    ユニセフ 屋根用トタン
    コスペ 屋根の設置
    FAO 家庭菜園
    WFP/セーブ・ザ・チルドレン 食糧


    虐待のケース
       2004年に、女の子で、実の祖父によって虐待されているというケースがあった。祖母はこの状況に気づいていたが見ないふりをしていた。子どもがNCPスタッフにこのことを報告したことで事件が明るみに出、母親が子どもを引き取った。NCPスタッフは虐待について、また虐待にあった際の対処法なども教えているため、この子どもはNCPスタッフに通報し、保護されることができた。


    干ばつの影響
       干ばつの影響は子ども達にも確実に及んでいる。干ばつで作物がとれず配布される食糧に頼って生活しているが、食糧の配布量も削減されてきたため十分な食糧を得ることができない。以前はそのような子ども達にNCPスタッフ等が自分達に支給された食料を分け与えていたが、現在はCaregiverへの支給量も削減されたため、それができないでいる。


    健康状態
       子ども達によく見られる病気の中には水虫や他の皮膚の病気が多い。下の写真は別のNCPを訪問した際に見られた症状の1例である。回虫の予防としては、政府が1年に1度ワクチン摂取を行っている。医薬品なども不足しているため、過去には王族が医薬品を寄付したこともあったが、すぐに薬も使ってしまった。


    NCPのニーズ
       このNCPにはキッチンや倉庫など基本的な設備が整っていない。また、食糧、石鹸、塩、薬などの基本的なアイテムも不足しているため子ども達のニーズを十分に満たすことが難しいとのことだった。その他にも畑を囲い、家畜が作物を食べるのを防ぐためのフェンスなども必要だということだった。以前FAOがフェンスを支給することになっていたがまだ支給されていない。同じくFAOにより貯水タンクが2つ支給されたが、政府からの給水がないため空の状態である。1つの貯水タンクは、他のNGOによりNCPの屋根の雨どいと連携させ雨水を貯められるようにしてあった。
     現在NCPスタッフはボランティアであるため、WFPの食糧の支給を受けているが、報酬がもらえるようになることを希望していた。


    (10) 慢性病を患う病人のいる世帯
       ジェフリーは30代の男性で、2005年にリュウマチと診断されて以来関節の炎症や痛みに悩まされ、体の自由がきかなくなり、現在は殆ど寝たきりの状態である。彼は未婚だが、娘が2人、息子が1人におり、それぞれ母親が違う。上の2人の娘は現在学校に通っているが、末の息子は学校を退学している。現在彼は母親と生活をしているが唯一の収入源は政府から3ヶ月に1度支給される300ランドのみである。彼は薬が必要な時はコミュニティーにあるナザレクリニックに行くという。クリニックは彼の事情を理解しているため無償で薬を提供してくれるという。彼はWFPからの食糧配布も受けており、2ヶ月に1度米12kg、メイズ12kg、750mlの食用油2本、豆1kgを受け取っている。また、ある議員からは車椅子を寄付されたこともあるという。HBCやRHMが月に1度彼を訪問し、薬がある場合は薬を支給してくれる。


    ニーズ
       食糧や石鹸などの基本的なものに加え、車椅子で入れるトイレが必要だという。現在はそのようなトイレがないため外でするしかないのが現状である。


    (11) VCT センター
       VCTはナザレクリニックに隣接しており、ナザレクリニックがユニセフとのパートナーシップにより建設した。検査には1人辺り3ランド支払っている。定期的にコミュニティーに出向き検査を受けるように呼びかけており、その際の検査は無償で行っている。3歳以下の子どもが検査に連れてこられた場合は、隣のクリニックの母子感染予防対策(PMTCT)を紹介している。15歳以上で未婚の場合は親の承諾を得て検査を受けられる。現在クリニックでは抗ウィルス剤を服用している40人を対象に10kgのCSBを支給している。これは、空腹で薬を服用することを防止するためである。


    (12) ナザレクリニック
       クリニックでは看護師の女性に話を聞くことができた。このクリニックには現在看護師とアシスタントの女性の2人が勤務している。話によると以前は複数の看護師が勤務していたが良い条件の仕事を求めて辞めていってしまった。今回は看護師にインタビューをすることができた。


    干ばつの人への影響
       干ばつにより、HIVに感染した母親が、授乳するケースも少なくないが、これは母子感染のリスクを高めてしまう。このような事態を防ぐためにクリニックの母子感染予防対策としては母親に対する啓発活動なども行っている。
     多くの子どもが栄養失調や低体重であるとクリニックの看護師は語った。クリニックではPMTCT※18 以外にも母親に抗ウィルス剤を支給している。
     
    ※18 PMTCTはPrevention of Mother to Child Transmissionの略で、HIVの妊産婦への感染を予防する対処法のことを指す。


    問題点
       看護師の話によると、HIV/エイズに関する偏見は未だに強いため、家族にHIV/エイズの人がいることを秘密にしている世帯も少なくない。このため抗ウィルス剤など必要な処置を受けられないため状況が悪化してしまうことが懸念される。
     看護師によると住民が抱える最大の問題は食糧と水であるとのことだった。これは住民の健康に悪影響を及ぼしている。


    保健衛生普及員(Rural Health Motivators)
       保健衛生普及員(Rural Health Motivators 、以下RHM)はクリニックと連携し、住民の保健サービスを提供する役割を担っている。RHMはボランティアで、コミュニティーにより推薦され、リーダー等によって任命される。この他の医療関連のイニシアチブには、2004年に始まったIntegrated Management of Childhood Illnesses (IMCI) が挙げられる。これは5歳未満の乳幼児の健康状態を改善するための事業である※19
     
    表7:ナザレクリニック利用者数 2006年1月〜12月
    Outpatient (OPD) Community Health Worker (CHW) Feeding Program (FP) Delivery (DEL) Antenatal Care (ANC) TOTAL
    6,600 4,784 1,248 3 870 13,505
     
    ※19 IMCの詳細については以下のHPを参照: http://www.who.int/child-adolescent-health/integr.htm


    (13) 女性を世帯主とする家庭(Female-Headed Household)2※20
       モヤニさんは2年前に夫を病気で亡くし世帯主となり、現在は子ども達と生活をしている。彼女は少し前に自分がHIVに感染していることを知り、結核も患っている。彼女は約2ヘクターの農地を持っており、鶏ややぎなどの家畜も所有している。夫が無くなってから一人で農作業をしてきたが、平年約400kgの作物が収穫できていたのが、干ばつのため去年は75kgしか収穫できなかったという。これは家族が2ヵ月で食べる量である。現在WFPからメイズ23kg,豆5kg、750 mlの食用油2本を支給されている。以前は1ヶ月に1度だったが、現在は2ヶ月に1度に削減されてしまった※21。彼女は小さな家庭菜園で多少の野菜などを栽培していたが、水源が渇水してきているため、1日に使える水が1日100L(25Lを1日4回)と制限されてしまっているため、十分な水がない。水源は歩いて5分程度のところにあるが、病気の彼女にとってはかなりの重労働だと言う。
     
    ※20 これは、ロマハシャ地域 (隣接する、WVが地域開発事業を行っている地域)で行った調査による。
    ※21 成人が1日に必要とするカロリーは2,000〜2,100Kcalであり、WFPの通常の配布食糧からは1日1,800Kcal摂取のみである。ただし、調査時は2ヶ月に1度しか食糧が配布されていなかったため、実際の摂取カロリーは単純計算でわずか900Kcalでしかない。


    (14) 農民グループ
       このインタビューには農業グループのメンバーの女性5名が参加した。男性は国内や南アフリカの街、さとうきび畑、工場などでの仕事に従事しているため参加することができなかった。参加者は全員自給自足の農業、家畜業に従事している。シェウラには乳業に従事している者が2名だけしかいないとのことだった。
     農業組合は2003年に発足され、FAOにより導入された環境保全農業の一環としてキャッサバの栽培を始めた。これは10世帯でパイロット事業として実施され、全国に拡大された。
     小規模農業に従事している農民の中には家畜を盗まれモザンビークに密輸されてしまった農民も多く効率の良い農業を行うための牛耕ができない。多くの住民が綿を栽培していたが価格が下落し、市場を失った為メイズに転換した。現在は殆どの世帯がメイズのみを栽培している。


    水資源
       住民によると水は多くの地域で不足しており、囲いのない泉なども多くあるという。
     コミュニティーは、ごく小規模な水源開発を行った。これは、1つの地区で、泉の合流地点を土嚢などでせき止め、パイプで近隣の5世帯に水を引くというものである。この水を使い各世帯では家庭菜園を作り野菜を栽培しており、それを低価格で住民に提供しているという。
     現在の水不足を緩和するための手段として参加者の提案はダム建設と作物を栽培するための灌漑システムを挙げた。灌漑システムの必要性に関しては、泉や他の水源から水を汲むことがかなりの重労働だということが挙げられた。


    伝統的な品種
       伝統的な品種は、メイズが主流となる以前に栽培されていたものである。これらにはピーナッツ、ソルガム、アワ、キビ、モロコシ、緑豆、キャッサバ、ごま、ササゲ(大角豆)などがある。伝統的品種は栄養価の高さと干ばつによる水不足に強いなどの利点があるが、何代にも渡りメイズを食べてきたため、これらの品種よりメイズが好まれている。農業組合はこれらの品種を復活させてようと、その推進を試みている。
     伝統的な品種に転換するに上で市場へのアクセスや作物の価値などが重要となる。その他、調理法などの活用方法についても知ることによりとれた作物を食べる習慣を習得することができる。これらの知識を身に付けることによってコミュニティー全体が恩恵を受けることができると農業組合のメンバーは語った。



5. 調査結果と今後の対応

今回の調査とその分析を通じ、以下のことが確認された。


  南部アフリカの広域干ばつ
今回の大規模干ばつは、スワジランドはもちろんレソトやジンバブエ、南アを含む南部アフリカ全体を遍く襲っている。ただし、一言に干ばつ被害といってもHIV/AIDSや貧困といった、社会に蔓延する消極的な諸条件によって各国の被害の程度には偏差がある。
スワジランドは、今回干ばつ被害を蒙っている国の中でも、その被害が最も大きく社会の中にインパクトを与えているが、それはこのような消極的な諸条件を他の国よりも多く持ち合わせているからに他ならない。


  スワジランドにおける干ばつ被害
今年の干ばつは例年と異なり、スワジランドに4つある全ての地方を巻き込む大規模な災害となっている。例えばLubombo plateauでは、2004年から2006年までの過去3年間の平均に比べ68%、また通常であれば干ばつの被害を受けることのないHighveldでも56%の降雨量しかなかった。
この結果、メイズ生産は国全体で前年比40%の26,170トン、過去5年間の平均生産量の35%しか収穫できなかったが、これは今年の干ばつが例年にない規模と深刻さを示している。
スワジランドでは、上記の通り社会に蔓延する消極的な諸条件の結果、既に脆弱性の高まっている社会的条件の上に、さらに今回のように本来社会が吸収しうるダメージのレベルを越えたインパクトの非常に強い災害が襲ってきたことにより、社会が本来潜在的・制度的に持ち合わせている問題発生時の対処メカニズムの能力※22をはるかに越えてしまい、その結果更に災害時における社会の対応能力を低下させる(=脆弱性を高める)という悪循環に陥っている。
   
※22 スワジランドでは王やチーフをはじめ伝統的な社会構成・体系が比較的強固で、チーフの下にコミュニティーが共同で耕作を行い脆弱者の保護を行うなどといった伝統が存在するが、社会の脆弱化によってこういった制度自体が崩壊の危機にある。


  これまでの干ばつ支援と現在直面する危機
スワジランドでは、これまでの干ばつに際し食糧支援に偏重した “古典的な緊急支援”にその対策の重点がおかれ続けており、最終的に地域の自立を開発を通して促す「架け橋」としての人道支援が十分に行われてこなかったことも、今回の大規模な干ばつによって被害が広がっている一因として挙げられる。
その一方で、例年のレベルを遥かに超える現在の干ばつへの対応にあたっては、一般的に長い時間をかけて行う開発支援による対応は適切な方法ではない。その理由として、現在40万人にも上る支援対象者が直面しているのは、過去15年にわたって続いてきた干ばつによってもたらされた継続的な食糧不足の状況(Chronic food insecurity)とは異なる、緊急に食糧支援を必要とする状況(Acute food insecurity)だからである。
これは、今回の干ばつによって食糧や水を中心とした生命維持に不可欠な条件を十分に満たせなくなってきており※23、特に脆弱者グループにとっては、来年の収穫期までどのように生き延びるかがまさに最大の課題であるという抜き差しならない待ったなしの状況にあることが今回の調査で明らかになったことが挙げられる。これは、今回の干ばつに関わる入手可能なデータ※24に裏付けられる状況がスワジランドで実際に起こっていることを示すものである。
従って、既存の支援枠組み、やはり最も大切な支援の一つであるWFPによる食糧援助などやFAO、UNICEFなどによる支援と相互に補完しながら、支援対象者が来年までの収穫期(来年4月頃)まで生活を乗り切るための支援を行うことがまず最も重要である。またその支援は脆弱者に特別な配慮をするものでなければならない。さらに、今回の支援は単に短期間の効果をもたらすものだけではなく、既に脆弱な各世帯とコミュニティーが、支援によって特に干ばつに対する彼らの回復力(Resilience)を高めることができるようにすることが肝要である。
さらに、(単なる依存を誘発する支援ではなく)コミュニティー自身の回復力を高められる緊急支援を行うなかで、その後の復興・開発へと支援を継続していくというプランが重要になってくる。具体的には、JPFのような緊急支援に続いて国連機関との共同事業やN連などによる中期的な復興支援、そして自己資金による長期的な開発支援へと、計画的な支援へとつなげていくことが今回のようなスロー・オンセット型の災害支援には必要である。
 
※23 調査の中で、今年は多くの世帯で家計の数か月分もつ程度しかメイズの収穫ができず、特に脆弱者グループは食糧支援でかろうじて生活していることが明らかになった。
※24 特にFAO/WFP CFSAM、UNOCHA “Swaziland Drought Flash Appeal 2007”


WVJとJARでは、今回の調査結果を受け、今後の対応として以下の支援を計画している。


  <WVJ>
   WVJとしては、既に食糧支援を通じて緊急支援を行っているWFP、FAO、UNICEFなどとの重複を避け、むしろ相互補完的な効果をあげるために以下の3本柱で支援を行いたいと考えている。
1. 水源開発
   食糧と同様に今回の干ばつにあたり非常にニーズの高い水の供給に照準を当てる。具体的には井戸の掘削を始めとする水源開発を行うものとする。これによって、最低限生命を維持できるよう基本的ニーズを満たすこととする。

2. 小規模フォード・セキュリティー
   次に、干ばつに強くかつ生育期間の短い種類※25の種子を受益者に配布し、同時に自宅周りで小規模な食糧生産をするための栽培キットの配布を行う。これによって配布食糧に加えて必要なエネルギーの補給を可能にし、不安定な食糧事情の中でも食糧の入手ルートを多様化することを可能にする。

3. 脆弱者支援
   今回、特に保護者の不在や不十分な食糧によって他のグループよりも干ばつの影響を強く受けているOVCや貧しい家庭の子どもに対して特別のケアを行う必要がある。これはNCPという既存の枠組みを使い、コミュニティーの中で取り残されている子どもたちが当然受けられるべき基本的な社会的サービスを得られるようにする。これはプロテクションを専門とするJARとの共同で行うこととし、WVJはそのうちNCPの建設部分を受け持つこととする。
 
※25 ソルガムや豆類、キャッサバやサツマイモ、野菜を想定している。これによって炭水化物とビタミン類の摂取を可能にし、WFPの配布食料の不足分を埋めることとする。


  <JAR>
   JARとしては、もっとも社会的に脆弱な子どもたちを中心にプロテクションの観点から、今後の対応として以下の支援の可能性を探っている。
1. 上記WVJとの共同で建設するシェウラ地区のNCP2棟に関して、JARでは地域のコミュニティーのイニシアチブを最大限引き出しつつ、以下の手順で立ち上げの支援を行いたいと考えている。
地域のコミュニティーに対し、詳細な調査をして設置場所の候補を選定。その後、チーフを含めた自治組織、提携するUNICEF等と協議し最終的に設置場所を確定する。
設置を決めたコミュニティーに対し、建設を含む協力や運営する母体となるコミッティーの設置(コミュニティ・リーダー、女性代表、ユース代表を含む)
4名のCare Giverと選定とトレーニングの実施
新しいNCPに対するコミュニティーの持続的な参画を保証する取り組みを行う

2. 「世界女性の日(3月8日)」を利用したイベントを開催し、女性や子どもの権利をスワジランドのコンテクストで啓発し、コミュニティーの中から性的搾取防止やエイズ対策の重要性を理解してもらう。


添付資料1:議事・訪問記録

  • 9月13日(木)
    訪問先:在南アフリカ日本国大使館
    時間:10:00〜12:00
    出席者
    大使館側
    田中康彦氏(一等書記官・ODA担当官)、細川アキヨシ氏(一等書記官)、北原サチコ氏(三等書記官)、井ノ口一善氏(専門調査員)
    訪問者側
    長有紀枝(JPF代表理事)、山内麻里(JPF事業部)、坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    1) 自己紹介
    2) 訪問側 団体紹介、訪問目的等
    JPFの概要 ・WVJ団体、活動紹介 ・JAR団体、活動紹介
    スワジランド初動調査 目的、訪問先等紹介
    スワジランド政府関係者 アポ取りへの謝辞
    3) 大使館側の干ばつ被害に関する情報提供(おもに前週にスワジランドを訪問されたキタハラサチコ氏より説明)
    前提として、災害が恒常化しているという認識を持っており、さらに深刻化、また繰り返し起きることへの備えが重要と考えている。ただし、昨年の状況は本当に深刻であった。
    一般的な治安状況はそれほど問題がないが、都市部で強盗にあったとの報告や幹線道路沿いなどは注意してほしい。
    干ばつの被害について、昨年は収穫ゼロの地域もあり、またメイズの値段が上がっていることから、貧困層全体への打撃は大きい。
    ダムの貯水率も下がっている。10月からは雨期と考えられるが、もし昨年同様今年も降水量が少なければ、打撃はさらに大きいものとなるだろう。
    徐々に深刻さが増している感じで、たまっていた問題が吹き出してきている。国全体として、災害に対する備えが不十分という感じではないか。とくに貧困層に対する対策は準備がなかったと思われる。
    各種データの信頼性に疑問があり、正しいデータを集める事が困難である。
    4) 日本政府よりスワジランドへの援助について
    日本政府からのODAは、ドナーのなかでトップ
    ここ数年、WFPを通じて食糧援助を年間1億円ずつ行っている。中心はメイズ。
    4〜5月に配給されており、今年はちょうど干ばつ被害にヒットして効果的だったと思っている。
    今年度の拠出は決まっていない。なくても出せなくはないが、スワジランド政府から正式な援助要請書が届かないので、やりにくさを感じている。
    5) 経済全般
    物価上昇がここに来て6%程度まで上がっている。じゃっかん南アフリカの上昇につられている部分がある。
    農産物では、さとうきびを中心に商品作物が上向いており、逆に食糧生産が下降傾向にある。
    貧困層の増加や困窮は、前記2点に加えて、南アフリカに出稼ぎに行っていた鉱山の労働者が職を失って(南アフリカの外国人労働者削減のあおりで)、帰国しても職がないなどのケースが散見される。
    6) HIV/AIDS
    スワジランドの特徴として、男性中心社会であり、労働者や国境越えの運送業者などが介在しているケースが多いと見られる。
    Polygamy(一夫多妻制)が広がっているという節もあるが、はっきりしない。
    携帯電話の普及で、「出会い(売買春)の組織化」が容易になっている部分もあるかもしれない。
    国民・政府に、危機意識がないことが問題。
    7) その他の政府援助
    技術協力では、JICA(担当:ミツモト氏)がプレトリア大学と提携して、HIV/AIDSのモニタリングを行っている。
    草の根資金協力では、年に1〜2件程度、学校や施設を通じて、HIV/AIDSのワークショップや職業訓練を行ってきた実績がある。
    草の根は、今後も積極的に考えたいが、受け手のキャパシティが常に問題で、そうした団体を紹介いただけるとありがたい。
    8) その他
    「カウンターパート・ファンド」を使って、スワジランド大学のダミアノフ氏(ブルガリア人)が学内で行っている、農業試験場(かんがい・HIV予防)を支援している。
    キタハラ氏の前任のマエヒラ氏が、スワジランド情勢全般についても意見交換をしていたので、時間があれば立ち寄られてはどうか?(時間が取れず、実現せず)

  • 9月14日(金)
    訪問先1:ワールド・ビジョン・スワジランド事務所
    時間:9:20〜11:00
    出席者
    ワールド・ビジョン・スワジランド事務所側
    Mr. Marko Ngwenya氏(National Director)、Ms. Liz Satow (WVI)、Mr. Theo
    訪問者側
    長有紀枝(JPF代表理事)、山内麻里(JPF事業部)、坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    1) 到着あいさつ、訪問目的説明、協力要請、等
    2) スロー・オンセットによるリリーフワークについて
    3) 信頼性の高いデータが不足がち
    4) 給水事業の必要性とUNICEFとの協力について
    5) Sanitationでは、DfIDが力を入れており、トイレ規格やHygiene Promotionの標準化を政府機関(NSCC)とともに行っている。

    訪問先2:国連児童基金(UNICEF)
    時間:10:20〜11:40
    出席者
    国連児童基金(UNICEF)側
    Jama Gulaid氏(UNICEF Representative)、Thinie Dlamini-Mutyaba (Child Protection Officer) 他3名
    長有紀枝(JPF代表理事)、山内麻里(JPF事業部)、坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)※JPF2名は次の訪問先へ向かうため途中退席。
    協議・調査内容:
    1) スワジランドで重点的に実施している事業
    Child Protection
    Water & Sanitation
    2) 資金調達
    DIfDからWFPとUNICEF(WATSAN)に200万英ポンド拠出。ただし、トータルで1600万ドル必要なうちの一部にすぎず、ドナー側の反応は良くない。
    3) 現状分析
    北部穀倉地帯で今年起きた山火事で、多くの穀物が収穫できず、干ばつの被害に輪をかけて状況は厳しい。
    前年度の天候は、4月まで雨が降らなかったため、穀物の生育には間に合わず、収穫がないか、あっても収量が極端に少ない地域が多い。また、例年であれば東部地域の干ばつ被害多発地域が被害を受けるが、昨年度はほぼ全土に被害が広がっている。
    赤十字を通じて、Survival Kitsの配給を実施
    Water事業では、政府と共同調査を行い、105の重点的な地域を選定した。WVなど有力なパートナーNGOを求めている。
    Child Protectionでは、干ばつでWater Pointの水位が下がることにより、いくつかの地点で水が干上がり、水くみが長距離化(子どもの家事として)し、そのため性的虐待が起きている。援助関係者によるGBVも報告されている
    もっとも脆弱性が高いグループとして、子どもだけの家族、とくに一人っきりの子ども、また年老いた祖母が多くの子どもの世話をしているケースなどで、とくにFood Insecureが著しい
    活動のキー・ポイントは、性的虐待の防止、社会心理的アプローチの必要性、サービスへのアクセスの確保。おもに、Neighborhood Care Centre(NCP)への協力をImplementing Partner(現地NGOなど)を通じて行っている。
    NCPへの協力の他に、政府と共同でLL Project(スワジ語でLihlombe Lekukhalela = Shoulders Cry-On)という取り組みにも参画しており、Child Protectorを各コミュニティーに設置し、UNICEFがトレーニングに協力して、コミュニティーで子どもの虐待が起きないように監視するシステムが動き出している。
    この干ばつで売買春が増加している。またこれまでこの国で見られなかった自殺が報告されているのも、深刻さの表れではないかと考えている。
    HIV/AIDSも子どもの間に蔓延しているが、母親への意識喚起がキーになる。コミュニティーでトレーナーを養成していきたい(保健省の管轄のRHM-Rural Health Motivatorをさらに能力アップさせる等)
    4) 協力の可能性
    全体として、やはり今回の干ばつによって被害が大きかった地域の中でも、スワジランドは特にドナーの関心が低いようで、必要なファンドと現状とのギャップが大きいので、どのような部分でも、みずからファンドを持って来てくれるのは歓迎。協力できるところはぜひ協力してきたい、とのことだった。
    WATSAN事業については、とくに技術的に信頼に足るパートナーがなかなかスワジランドで見つからないので、(とくにWVに対して)協力を強く要請された。
    Child Protection分野(女性を含む)では、なかなか正確なデータのアップデートが困難なことから、とくに干ばつ被害が大きい地域での現状把握が難しく、現地に入ってデータをあげてもらえるのは助かる。
    さらに、干ばつによって貧困層が増していることから、報告されている以上に被害の増大が考えられる。HIV/AIDS対策も併せて、UNFPAとの協力などともあわせ効果的な介入をしたいと考えている。

    訪問先3:Ministry of Regional Development and Youth Affairs
    時間:14:30〜15:15
    出席者
    Ministry of Regional Development and Youth Affairs側
    Christabel Motsa氏(Principal Secretary) ほか2名
    訪問者側
    長有紀枝(JPF代表理事)、山内麻里(JPF事業部)、坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    とくに干ばつの被害が大きかった地域について説明。Lubombo地区は、つねに干ばつの被害を受けやすく、脆弱な地域だと考えているので、そこで事業を考えてくれるのは歓迎する。ただし、今回の干ばつは、基本的には全国の農地で被害が出ており、メイズの値上がりもあるため、農業従事者以外の貧困層の被害も大きいので、Lubombo以外の地域の支援も考えてほしい。
    政府としては、地域のコミュニティーのエンパワメントを重要視しており、とくにUNICEFと協力して、NCPなどもチーフを中心にコミュニティーに働きかけているし、NGOとの関係強化も重視している。またトレーナーも全国に派遣している。
    いま最も必要な支援は、やはり農業地域での食糧支援だと思われる。
    訪問側からは、「緊急食糧支援の要請書が届かない」という日本政府(在南ア日本大使館)からの伝言を伝え、できるだけ早い時期に必要と思われる旨を説明した。

    訪問先4:Ministry of Agriculture and Co-operatives
    時間:15:30〜16:30
    出席者
    Ministry of Agriculture and Co-operatives側
    George Ndlangamandla氏
    訪問者側
    長有紀枝(JPF代表理事)、山内麻里(JPF事業部)、坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    1) 農業の現状
    今回の干ばつの影響による作柄は、とくにメイズは政府が統計を取り始めて以来、記録に残っている限り最悪のデータになっている。もちろんデータを見るまでもなく、全国を回ってみて、一度も干ばつの被害を受けていないような地域でも、今回は支援要請を聞くほど、エリア的にも収量的にも甚大な被害を受けた。
    それでも、ある程度蓄えが持てている地域はまだ持ちこたえている感があるが、もし今年も同じような干ばつが起きれば、余裕は全て失われ、食糧支援が必要な世帯は飛躍的に増加するだろう。貧困の増大については、長年南アフリカの鉱山に働きに行っていた男性が帰国してきて、農業もまともにできず、また国内で就職もできない人口が増えていると考えられる。
    長年干ばつの被害は、東部のモザンビーク国境に沿った地域が、南北に長く影響を受けており、今回の干ばつでももっとも深刻であることは間違いない。その多くは、Lubombo地域に含まれている。
    2) 対策
    現状としては、次の収穫のある4月くらいまでの食糧支援は必須。
    その上で、もっとも農家にとって基幹作物であるメイズに関しても種子も残っていない世帯があり、そこには種子を配給しなければ当然収穫はなくなるので、4月以降の食糧支援へのプレッシャーを弱めるためにも、自立を促す意味でも種子の支援の意義は大きい。
    生活に必要な水さえ確保できない地域が増大する中で、農業用水がさらに枯渇する可能性はあり、かんがい施設を含むかなり大きな視点からのコミットメントが必要な状況になってきている。
    食糧生産から換金作物(さとうきびなど)に転換している農家は増えており、食糧生産のみを行っている農家より、余裕があるように見受けられる。ただし、国際市場の価格によって大きく左右されるため、それが今後の安定をもたらすかどうかは判断がむずかしいところである。
    さとうきびプランテーションのようなところで働いて賃金を得ている農民も、比較的干ばつの被害は少ないのではないかと思われる。
    干ばつは今後も恒常化する可能性は高いと考えざるを得ず、メイズよりも乾燥に強い作物に転換すべく、実験やパイロット事業は始めている。ただし、問題はスワジランドの人々が食べたこともないものを受け入れるかどうか、結局それによって生産はできても買ってくれる人がいないという恐れもあり、農家としても政府が指導してもそのとおりに行動するかどうか、自信がないのも事実である。
    マーケットの開拓も、農業技術の普及と同時に考えていかなければならない問題である。ただし、農業技術の面では、メイズはもともとスワジワンドで耕作されていたものではなく、外来種であるので、原産(Indigenous Crop)のソルガム、キャッサバなどはそれほど転作が困難とは思われないし、食料としても一度受け入れられれば人々は口にするのではないか。朝食には、ソルガムのポリッシュを普通に食べている。
    バイオ・エタノール系の商品作物が将来有望であると考えられる。実験も始めている。
    3) 訪問側
    日本政府への緊急食糧援助の要請書は、できるだけ早く提出した方が良いことを伝える。

  • 9月20日(木)
    訪問先1:世界食糧計画(WFP)スワジランド事務所
    時間:9:00〜10:00
    出席者
    世界食糧計画(WFP)スワジランド事務所側
    Abdoulaye Balde氏(Representative and Country Director)
    訪問者側
    坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    1) WFPの活動
    日本は2002年以来、スワジランドへの食糧支援をWFPを通じて行っていただき、非常に感謝している。内容としては、メイズ、食用油、CSB、豆など。
     現在、41万人(総人口約110万人)が食糧援助を必要とすると考えている。政府もそのように発表し、“Emergency”であると宣言している。
    日本政府に対して「緊急援助要請書」が届いていないようだが、という質問に対しては、そうしたきちんとした対応をしないのが、スワジランド政府の課題で、他のドナーもたとえば同様の被害を受けているレソトに比べても反応が鈍く、WFPも困っているとのこと。
    WFPでは、7月以降次の収穫がある4月まで食糧援助が必要であると考えており、そのような計画をすでに立てて、ドナーに支援要請している。
    パイプラインは、非常に安定していないが、今後の予定として厳しい時期なども明示して関係者に説明している(別添参照:11月は厳しい。とくに油はすでに不足している)。1年間合計で280万トン必要なところ、3千トン以上が不足している。
    一般的な食糧配布に加えて、受益者の援助依存度を下げる意味でも、Food For Workにも力を入れたい。共用耕作地の開墾、蜂の養殖、山羊などの家畜繁殖、溜池のような設備建設、等の整備を行いたい。
    受益者の状況、特に子どもに関しては配慮している。現在503カ所のNCPへの配給をUNICEFなどと協力して行っている。全世帯の15%は、子どものみの世帯となっており、ニーズが高い。50,000人の子どもにはNCPを通じて、100,000人の子どもには、学校給食で対応している。
    日本政府がコミットしている「人間の安全保障基金」にもUNICEFなどと共同で申請したいと考えている。

    訪問先2:国連児童基金(UNICEF) 2回目
    時間:11:00〜12:00
    出席者
    国連児童基金(UNICEF)側
    Thinie Dlamini-Mutyaba (Child Protection Officer), Kheto Dlamini (Child Protection)
    訪問者側
    石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    1) 訪問者側からのフィールド(シェウラ)状況説明
    2) 今後の支援のあり方と連携の可能性について
    シェウラ地域については、NCPは足りていない。4カ所が稼働しているとしても、10カ所は必要である。
    ファンドも十分ではないので、もし設置に関わってもらえるのであればありがたいし、協力は惜しまない。
    NCP1カ所に対して、質を確保するため、保護する子どもの数は50−70人を基準としている。それに対し、Care Giverは4人必要。
    NCP設置にあたっては、子どもが長距離歩かなくても来られる場所であること、特に女の子がブッシュを通るような状況にはしないこと。
    NCP設置に関しては、UNICEFとしては資金の問題からファンドできないが、トレーニングについては協力できる。トレーニングは、できれば3日間合宿形式で、2〜3回行えるとよい。
    もし、UNICEFの基準に則ったNCPの設置に協力してもらえるなら、MOUを結ぶことはやぶさかでないし、また役割分担などはっきりさせるのがいいと思う。そうなれば、WFPからも給食で支援される可能性が高い。
    3) NCP設置に必要な条件
      まずは敷地をコミュニティーから提供してもらい、最低限建物とキッチンの設置が必要。水源(井戸等)とトイレ、食料の貯蔵庫、できればフェンス、ガーデニングが可能な庭があることが望ましい。
      さらに基本的な設備として、料理ができるかまど、調理用器具と食器類、洗剤等が必要。
      とくに脆弱度の高い子どもには、毛布、靴、靴下、ジャケットなどを配給できると尚良い。
      NCPの設置自体は、材料やコミュニティーの協力度合いによっても違うが、10,000〜20,000ドルのコストがかかる。

  • 9月21日(金)
    訪問先1:世界食糧計画(WFP)南部アフリカ地域局事務所
    時間:11:00〜12:00
    出席者
    世界食糧計画(WFP)南部アフリカ地域局事務所側
    Abdoulaye Balde氏(Representative and Country Director)
    Amir Abdulla氏(Regional Director)
    Thomas Yanga氏(Deputy Regional Director)
    Makena Walker氏(Regional Resource Mobilization Officer)
    訪問者側
    坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    1) 地域の被害状況
    人口比率で見た、地域の中での被害が多い国は、やはりスワジランド、レソトだと考えている。
    ジンバブエも被害の程度は大きいが、政治的な困難さや経済不振も考え合わせると、純粋な干ばつ被害と言いにくいところもあり複雑である。
    1992年にも大きな干ばつ被害があり、この地域の人々はみな記憶に残っているが、今回はそれを上回るとほとんどの地域で聞いた。
    地域全体で、メイズの価格は上昇しており、スワジランドのような貧困層の比率が高い国では、被害の深刻さがより大きくなっていると思われるが、なぜかドナーの関心がレソトなどと比べても低く、困っている。日本においては、毎年スワジランドに食糧援助をしていて感謝している。
    メイズばかりではなく、他のバイオ燃料になる作物の価格は国際市場でも上がっていて、困った状況だと個人的には考えている。温暖化の防止になるとしても、目の前の飢えている人を救うことのできる食糧が燃料に変わっていくことはいかがなものだろうか。

    訪問先2:在南アフリカ日本大使館(帰国報告)
    時間:16:30〜17:30
    出席者
    大使館側
    田中康彦氏(一等書記官・ODA担当官)、イノクチカズヨシ氏(専門調査員)
    訪問者側
    坂賢二郎(WVJ海外事業部)、大木悠子(WVJ海外事業部)、石井宏明(JAR)
    協議・調査内容:
    1) 訪問側から
    今回初動調査への協力への感謝
    スワジランドの現状、フィールドを観察して来た感想、および2団体からJPF事業の必要性の説明と協力のお願い
    2) 大使館側
    アフリカ南部は、全体として「援助はもういいのではないか」という雰囲気が政府全体でもあって、説明がしにくいのは確か。
    ただし、スワジランドやレソトのように貧富の差が激しく、援助の必要がないとまでは言えないことは、現場にいるわれわれは把握している。
    また今回のJPFは、現場に日本のNGOが入っていっていただけるので、将来のことも含め説明するいいテコにできればと考えている。
    人間の安全保障基金についても考慮の余地はあるので、いい案件をあげてほしい。
    また、資金の間をつなぐ意味でも、数件であれば(半年程度の)1000万円以下の案件であれば積極的に考えたいので、受け入れ先(それがWVスワジランドも可)なので、ぜひ良い団体があれば紹介いただきたい。


添付資料2:別表(調査地における詳細情報※26)

※26 シェウラ地域書記が管理する地域の情報による。

表8: シェウラ地域内の教育施設
保育園 ソベンタ
インフォーマル・スクール
NCP 小学校 高校
4 3 4 3 1


表9: 政府の学校に通う子どもたちの数(2007年2月現在)
学校名 児童数 OVC数 教師数 校長名
Mbandzamane Primary School 339 105 6 Mrs. T. Mabila
Shewula Primary School 457 157 13 Mr. Bhembe
Matembeni Primary School 721 202 16 Mrs. I Dlamini
Shewula High School 257 131 16 Mrs. N. D. Dlamini
Total 1774 595 51  


表10: インフォーマル・スクールの児童数 (2007年2月現在)
学校名 Basic 1 Basic 1A Basic 2 Post Basic 3 NUPE
Nduma 76 ND ND 13 23
Mswati 60 ND 50 20 ND
Matembeni 56 35 29 5 ND
Total 192 35 79 38 23


表11: 幼稚園の児童数 (2007年2月現在)
学校名 児童数 AIS-Assisted Children
Shewula Pre-School 32 3
Majembeni Pre-School 50 2
Mbandzamane Pre-School 47 1
Discovered Pre-School 13 1
Total 142 7


表12: シェウラ地域人口 (2007年2月現在)
年齢層 人数
Bantfwana (0-18 yrs old) 3,141
Youth (19-30 yrs old) 1,415
Women (Labatekiwe) 824
Men (31-59 yrs old) 793
Grandparents 60> 325
Orphans 915
Total 7,413



以上


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